紀伊半島の西南部に位置する和歌山県は、峻厳な山地や変化に富んだリアス式海岸など豊かな自然に恵まれています。
その大自然が生み出した「熊野古道」や「白浜海岸」などが観光地としては有名ですが、和歌山県には、この他にも魅力あふれるスポットがたくさんあります。
その中でも、今回は夏にぴったりの和歌山県の一押しスポットを紹介します。

秘境の地で筏下り「北山村」

北山村は、紀伊半島南部に位置している日本で唯一の飛び地村。険しい渓谷と清流に囲まれた自然豊かな村です。
この村で人気を呼んでいるのが、「観光筏下り」と呼ばれる、地域の伝統文化に基づいたアクティビティです。
これは、手すりの付いた筏に乗って、変化に富んだ急流を下る夏季限定の水上アクティビティで、涼を求めて訪れる多くの人々に親しまれています。
筏から望む渓谷美は、目を見張るほどの美しさで、巨石や一面に広がる杉林を眺めることができます。
他にも、急流を豪快に下るベテラン筏師の棹さばきも見どころの一つです。

日本に二つとない「飛び地」村

北山村は、和歌山県に属していながら周囲を三重県と奈良県に囲まれている、いわゆる「飛び地」の村です。村で飛び地になっているのは全国でここだけという珍しい自治体です。
本来ならば、隣接する三重県か奈良県に属すべきところですが、かつて物資の輸送手段として使われた「筏流し」により和歌山県新宮市との経済的・文化的な結びつきが強かったため、和歌山県に編入されたという歴史があります。

600年前から伝承され続けてきた伝統と技術

北山村は、その面積のおよそ97%が山林で、かつては林業が盛んに行われていました。
この土地で伐採された木材は、北山川〜熊野川の流れを利用し、「筏流し」と呼ばれる筏を使った輸送手段で運ばれました。
当時、北山村の人口の大半を筏師が占めるほど、筏流しはこの村に密接した特有の技術でした。現在、この「筏流し」は和歌山県の「無形民俗文化財」に指定されています。
しかし、約600年続いた筏流しも、ダム建設や道路整備を機に一時途絶えてしまいましたが、この村ならではの伝統を後世に伝えるべく「観光筏下り」として再興しました。
現在では、多くの観光客を魅了する重要な観光資源となっています。

丸太を組んだ筏で激流を下る水上アクティビティ

杉丸太を組んで作られた筏は、全長が30mにもなり、約6kmのルートをおよそ1時間かけて下っていきます。
水しぶきをあげながら、泡立つ激流をくぐり抜けるスリルや、美しい渓谷美との一体感を肌身で感じることができます。
日本全国に、川下りを楽しめるスポットは数あれど、職人たちの手によって組まれた丸太の筏に乗って川下りが体験できるのはここだけです。
筏下りの他にも、ラフティングやカヌーなど雄大な自然を活かしたレジャーを楽しめます。

住所 〒647-1604
和歌山県東牟婁郡北山村下尾井335
電話番号 北山村観光センター(道の駅おくとろ内)TEL 0735-49-2324
受付時間 9:00~10:50
アクセス 南紀白浜空港 → (南紀白浜空港リムジンバス)→JR紀伊勝浦駅
→ (南紀特急 名古屋行) → JR熊野市駅 → (北山村村営バス) → 北山村

夏の一大イベント!「那智の扇祭り」

和歌山県東牟婁郡那智勝浦町にある熊野那智大社では、毎年7月14日に「那智の扇祭り(なちのおうぎまつり)」が斎行されます。
このお祭りは、日本三大火祭りの一つとされており、大たいまつの炎が生き物のように参道を乱舞する和歌山の一大イベントです。
世界遺産である「熊野那智大社」や「那智の滝」、那智山の原始林を背景に繰り広げられる神事は、威厳と神々しさを感じさせます。

巨大なたいまつが参道を豪壮に乱舞する

「那智の扇祭り」は、熊野の神々が年に一度、元来鎮座していた「那智の滝へ」里帰りするための神事で、長さ6mの十二体の扇神輿に神々を移し、御滝へ渡御されます。
この祭りの一番の見せ場は、白装束に身を包んだ氏子たちが、重さ約50kgの燃え盛る大たいまつを担ぎ、大きな掛け声を発しながら石段を上り下りする場面です。
清らかな滝の水と荒ぶる炎のコントラストは、大自然の神聖さと畏敬の念を感じさせます。
他にも、礼殿での「大和舞」やユネスコ無形文化遺産に指定された「那智の田楽」などが式次第に沿って奉納されます。

原始林に朱塗の拝殿が美しく映える「熊野那智大社」

熊野那智大社は、日本全国に約4,000社ある熊野神社の御本社であり、社殿および境内は、2004年7月にユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として登録されました。
建造物だけでなく、参詣道までもが世界遺産として登録されるのはごく稀なことであり、世界でも類を見ない価値の高い資産として評価を得ていることがうかがえます。
うっそうと生い茂る那智原始林に囲まれ、標高330mに構える社殿は、俗世界から切り離されたような神聖さを放っています。
古くから山岳修行の聖地とされ、創建1700年を迎えた今でも、参詣に訪れる人々で賑わっています。

日本一の名瀑「那智の滝」

那智の滝_和歌山

熊野大社の別宮、飛滝神社の御神体として祀られているのが「那智の滝」です。
別称「一の滝」とも呼ばれ、落差・水量ともに日本一の名瀑です。
熊野の山上から轟音とともに流れ落ちる姿は、厳かな雰囲気が漂い、人々の畏敬の念を集めています。
この地に定着している那智山信仰は、滝や山、巨石そのものを崇拝の対象とする自然崇拝が起源となり、古くから数多くの人々の信仰を集めました。
「那智の滝」の水は、「延命長寿の霊水」として尊ばれており、初穂料100円でいただくことができます。

住所 〒649-5301
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1
電話番号 0735-52-5311(那智勝浦町観光協会)
営業時間 7:00~16:30
アクセス 南紀白浜空港 →(南紀白浜空港リムジンバス) → 紀伊勝浦駅 → (熊野御坊南海バス 31那智山線 那智山行) → 那智山より徒歩約10分

山岳を駆け抜ける展望列車「こうや花鉄道 天空」

「こうや花鉄道 天空」は、世界遺産の一つ「高野山」へと向かう観光列車です。
現存している日本最古の私鉄、南海高野線の橋本駅から極楽橋駅までを運行しています。
急勾配の斜面や急カーブのある険しい山間を縫うように進んでいき、標高とともに移り変わりゆく風景を楽しむことができます。
高野山は、弘法大師 空海により開創された日本仏教の聖地であり、真言宗の総本山です。
都会の喧噪から遠く離れた標高900mに位置し、まさに「天空都市」と呼ばれるに相応しい聖地であると言えるでしょう。

急勾配とトンネル、急カーブが連続する

「こうや花鉄道 天空」は、標高差が443mもある約20kmの区間を蛇行しながら駆け上がっていきます。
そのルートは、急勾配や大小24のトンネル、急カーブなど変化に富んでおり、山岳鉄道ならではのダイナミックな景観を楽しめます。
この観光列車のコンセプトは、「俗世間から精神世界へ」。聖地・高野山へと向かう道中、大自然との触れ合いによって感受性を豊かにする設計が施されています。

車窓からは四季折々の絶景を楽しめる

「こうや花鉄道 天空」の魅力は、何といっても広い車窓から見える壮大なパノラマです。
険しい山間の風景のみならず、菜の花や桜、ツツジ、ホタル、紅葉など四季によって様変わりする自然の営みを実感することができます。
他にも、車内を吹き抜ける森林からの冷気や花の香り、鳥のさえずりなど、高野山までの道程を五感で楽しめます。

内装や設備にもこだわりが満載!

「こうや花鉄道 天空」は、山岳の眺望を存分に楽しめるような工夫が凝らされています。
その一つが座席のタイプ。パノラマビューが一望できるように3枚続き車窓がある「ワンビュー座席」や、家族や友人と会話を楽しみながら景色を堪能できる「4人掛けコンパートメント座席」、鉄道が山岳の中を切り抜ける様子を先頭から眺めることができる「先頭展望席」などがあります。
他にも、畳のフリースペースや展望デッキが設けられており、車内のどこからでも眺望を楽しめるようになっています。

住所 和歌山県橋本市古佐田2-2-3 JA橋本駅前ビル1階
電話番号 06-6643-1005(南海テレホンセンター ※8:30~18:30)
営業時間 橋本駅発10:13(土日祝10:32)→極楽橋駅着10:54(土日祝11:13)など1日2往復
※土日祝は1日3往復 休み:水曜、木曜(祝日の場合運行)
※12月~3月は土日祝のみ運行
料金 座席指定料金510円
アクセス 関西国際空港 →(南海特急ラピート 南海難波行) → 天下茶屋駅 →(南海鉄道 南海高野線)→ 橋本駅より徒歩2分

江戸~明治時代へタイムスリップ!「湯浅町」

湯浅町_街並み_和歌山

有田群湯浅町は、醤油の発祥の地として知られる町です。
豊かな自然環境に恵まれたこの地では、漁業や柑橘類の栽培なども盛んです。
先人より代々受け継がれてきた町並みは、江戸時代から明治時代の面影をそのまま残しており、建造物を通じて醤油醸造の伝統を感じることができます。
他にも、古民家を利用した休憩所や土蔵づくりの民俗資料館など、散策をしながらこの町に根付いた伝統や文化、歴史に触れることのできる施設が充実しています。

職人の技と文化が息づく醤油発祥の町

湯浅町が醤油発祥の町になったのは、鎌倉時代に中国の宋からこの地域に「金山寺味噌(きんざんじみそ)」が伝来したことが所以であると伝えられています。
味噌の製造工程で出た赤褐色の液体「溜(たまり)」を、職人たちが研究・改良が重ねて現在の醤油が生まれました。
江戸時代に入り紀州藩の保護を受けながら、醤油醸造業は湯浅町を代表する産業へと発展していったのでした。
1841年創業の醤油醸造蔵「角長」は、代々受け継いできた昔ながらの製法にこだわり、現代にまで湯浅町の伝統を守り続けている老舗として有名です。

「重要伝統的建造物群保存地区」で日本の伝統美に触れる

醤油醸造を中心とした商工業で栄えた湯浅の町並みは、歴史的風趣を現代にもよく伝えていることから2006年12月に国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選ばれました。
市街地の東西約400m、南北約280m一帯が保存地区とされ、かつて使われていた醸造蔵や古い町家など伝統的な建造物が当時のまま保存されています。
白壁の土蔵や様々な形状をした格子、虫籠窓など重厚感あふれる造りが印象的で、町中を歩いていると、至るところからほんのりと醤油の香りが漂ってきます。

湯浅湾で水揚げされる、名物しらす丼が美味!

湯浅町は、黒潮の恩恵を受けて漁業も盛んです。
中でも「しらす漁」は盛んで、湯浅町のしらす類加工量は、和歌山県の9割弱を占めています。
湯浅駅から徒歩1分の場所にある「かどや食堂」では、湯浅名物のしらす丼を堪能できます。
湯浅湾で水揚げされたしらすを使用しているため、鮮度は抜群です。
特に「かどや食堂」の一押しは、しらす丼にかけられているオリジナルのタレです。湯浅の名産品である醤油、有田みかんの花から採れたはちみつ、紀州梅の梅干しが使われていて、この地ならではのコクと甘みがあるしらす丼を味わうことができます。

住所 〒643-0004
和歌山県有田郡湯浅町湯浅428
電話番号 湯浅町観光協会 TEL:0737-63-2525
営業時間 散策自由
アクセス 関西国際空港 →(関西空港線 関空快速)→ 日根野駅 → (特急くろしお)→ 湯浅駅から徒歩10分

和歌山県のソウルフードを味わう「グリーンコーナー」

「グリーンコーナー」は、和歌山県内にのみ店舗を展開しているローカル外食チェーン店です。
製茶業や飲食業を中心に手がけている「株式会社玉林園」が運営していて、和歌山県民が愛してやまないご当地グルメを味わうことができます。
抹茶のほのかな香りと苦みの少ない優しい味わいが印象的な「グリーンソフト」が夏の定番メニューです。
創業以来、長年和歌山の食を支え続けてきた「グリーンコーナー」で、昔ながらの味を堪能してみてはいかがでしょうか。

創業は江戸時代!「県民の味」を生み出し続けてきた玉林園

「グリーンコーナー」を運営する「玉林園」は、創業1854年の和歌山を代表とする緑茶製造会社です。
およそ170年の長い歴史の中で培った豊富な商品開発力で、和歌山県の食を支え続けてきました。
創業時は、お茶に関連した商品を取り扱っていましたが、今では飲食業にも力を入れ、様々なヒット商品を生み出しています。
そのヒット商品には、グリーンソフトをはじめ、てんかけラーメン、特濃抹茶ロールなどがあり、多くの人々に親しまれています。

世界初の抹茶ソフトクリーム

「グリーンコーナー」で販売されている「グリーンソフト」は、世界初の抹茶ソフトクリームとして知られています。
今でこそどこでも手に入る抹茶ソフトクリームですが、「グリーンソフト」発売当時の1958年頃は、ソフトクリーム自体がまだ目新しかった時代でした。
斬新なスイーツの登場に、当初人々は驚きはしたものの、美味しさが評判となって瞬く間に人気商品となりました。
今でも様々なメディアに取り上げられ、日本全国から注文が殺到するほどの人気を博しています。

看板メニューの一つ 「てんかけラーメン」も見逃せない

「グリーンコーナー」人気メニューの一つに「てんかけラーメン」があります。
こちらのメニューは、透き通ったスープに天かすや、わかめ、紅ショウガがトッピングされた和風ラーメンです。
ご当地グルメの一つに「和歌山ラーメン」がありますが、「天かけラーメン」は、和歌山ラーメンのこってりとした豚骨醤油とは対照的に、うどん出汁のようなあっさりしたスープが特徴です。
「最後の一滴までスープを飲み干せるラーメンを作りたい」という想いから生まれたこのラーメンは、老若男女問わず広く愛されています。
一度食べたら癖になる、ここでしか味わえないグルメをぜひお試しください。

住所 和歌山県和歌山市出島48-1(玉林園本社)
電話番号 080-4293-1909
営業時間 AM11:00~PM8:00 オーダーストップあり
アクセス 南紀白浜空港 →(徒歩5分)→ 白浜空港 →(南紀白浜空港線バス 白浜駅行)→ 白浜駅 →(特急くろしお 新大阪行)→ 和歌山駅 →(JR和歌山線 奈良行)→ 田井ノ瀬駅から徒歩15分

まとめ

夏の和歌山を満喫できる5つの一押しスポットを紹介しました。
紹介したスポット以外にも、海水浴場や温泉、アミューズメント施設などバラエティーに富んだ観光スポットが数多くあります。
東京から空の便を利用する場合は、和歌山県白浜町にある「南紀白浜空港」もしくは大阪府泉佐野市の「関西国際空港」を利用するのが便利です。
和歌山県内の電車やバスは、本数少ない地域もありますので、事前に計画を立ててから出かることをおすすめします。