亜熱帯性の温暖な気候に恵まれ、日本屈指の観光立県である沖縄には、マリンアクティビティや伝統行事など、夏を満喫できるスポットがたくさんあります。
かつて、諸外国との交易を通じて発展した琉球文化は国際色豊かで、今でも脈々と受け継がれている伝統は、沖縄のそこかしこで見ることができます。
沖縄の至るところに、神話や伝説が残っており、それらを紐解きながら各所を巡るのも沖縄の楽しみ方の一つです。
今回は、沖縄の歴史の移ろいを体感できる観光名所を5か所紹介します。

沖縄屈指の聖地を巡る!「斎場御嶽」

斎場御嶽_沖縄
南城市にある斎場御嶽(せーふぁうたき)は、琉球王国の創生神である「アマミキヨ」が造ったと伝わる聖地です。
人工的な建造物はなく、重なり合うように生い茂る樹木やむき出しの岩山など、手つかずの自然に覆われ、厳かな雰囲気が漂っています。
斎場(せーふぁ)とは、「霊力が豊かに満ちている場所」「最高位」を意味しています。
御嶽(うたき)は、南西諸島に分布している聖地の総称で、「神の降臨する場所」という意味を表しています。
つまり、斎場御嶽は、琉球王国最高の聖地であり、古くから続く沖縄独自の信仰に触れられる貴重な文化遺産と言えるでしょう。

琉球王国の精神文化を今に伝える世界遺産

斎場御嶽は、2000年12月に「琉球王国のグスク及び関連遺跡群」の一つとして、首里城などともに世界遺産に登録されました。
この遺跡群は、12世紀から15世紀にかけて琉球王国時代に建てられたもので、中国や朝鮮、東南アジア諸国との交易を通じて独自の文化を発展させてきたことをうかがわせます。
グスクとは、「城」を表す言葉ですが、軍事的な目的で建てられる一般的な城とは趣旨が異なります。
グスク内には御嶽(礼拝所)が設けられ、神や祖先と紐帯を確かめるための重要な聖域としての役割を担っていました。
今でも遺跡群からは、沖縄の伝統的な信仰形態である自然崇拝・祖先崇拝が、色濃く残っているのを見て取ることができます。

沖縄創世の女神「アマミキヨ」渡来した崇高な聖域

沖縄に古くから伝わる「琉球開びゃく伝説」によると、「アマミキヨ」(沖縄創世の神)によって沖縄本島が造られ、斎場御嶽をはじめとする「七御嶽」が人々の祈りの場として設けられたのが事の始まりとされています。
琉球王国時代に入り、斎場御嶽では、琉球の最高神女である「聞得大君(きこえおおきみ)」の就任の儀式が執り行われ、五穀豊壌や子孫繁栄、国の安寧が祈祷されました。
当時、神事に仕えることができたのは女性だけで、御嶽は男性禁制の厳格な聖域でした。
斎場御嶽の入り口から先へは、たとえ国王であっても袂合わせを女装に改める必要がありました。
つまり、国の最高権力者であっても例外は許されないほど、斎場御嶽の影響力はとてつもなく強大であったことがうかがえます。

二つの巨石が絶妙なバランスで支え合う「三庫理(サングーイ)」

斎場御嶽には、「イビ」と呼ばれる神域が6か所あり、神の依り代とされる岩石や神木が祀られています。
その中でも、最奥部にある「三庫理(サングーイ)」は、最も格の高い聖域と言われています。
二つの巨石が支え合うように立ちはだかり、自然の力の偉大さと壮麗さに心を打たれます。
また、夏でも涼しく感じられるほど風の通りがよく、大きな岩と岩の間の空洞から差し込む太陽の光には、神々しさを感じます。

住所 〒901-1511
沖縄県南城市知念字久手堅地内
電話番号 0735-49-2324
受付時間 3月〜10月 9:00~18:00(最終入館17:30)
11月〜2月 9:00~17:30(最終入館17:00)
アクセス 那覇空港 国際線旅客ターミナル前→ [琉球バス交通]99番天久新都心線(宜野湾営業所行)
→旭橋・那覇バスターミナル/那覇バスターミナル→ [東陽バス]38番志喜屋線(志喜屋行) → 斎場御嶽入口

エメラルドブルーの海原を渡る「古宇利大橋」

古宇利大橋_沖縄
沖縄本島北部にある古宇利大橋は、古宇利島と屋我地島を結ぶ、全長約2kmの橋です。
橋の下には碧い海が一面に広がっていて、車で橋を渡るとまるで海の上を走っているような感覚を覚えます。
橋の上から見下ろす景色は、絵に描いたような美しさで、コバルトブルーの海を泳ぐ色とりどりの魚や珊瑚礁を見ることができます。
そんな美しい海に囲まれた古宇利島では、海水浴はもちろんのこと、シュノーケリングやサイクリングが楽しめます。
その他、オープンテラスが設けられたカフェや展望台など古宇利ブルーの海を一望できる施設が数多くあります。

恋人たちがこぞって集う ティーヌ浜の「ハートロック」

古宇利島の北部にあるティーヌ浜には、2つの岩がハートの形に見える「ハートロック」があります。
これは、波の浸食によって何千年もの歳月をかけて形作られた自然界からの贈り物で、潮が引いている時間帯に行くと、岩の傍まで近づいて写真を撮ることができます。
テレビCMの撮影で、人気アーティストが訪れたことで一躍話題となり、今では古宇利島のシンボルとして人気を博しています。
古宇島には、恋にまつわる神話が残されていることから、カップルに人気の観光スポットとなっています。

風光明媚なパノラマを望む「古宇利オーシャンタワー」

古宇島には、島全体の景色が一望できる「古宇利オーシャンタワー」があります。
展望タワーへは、沖縄固有の植物が生い茂る庭園の中を自動運転のカートで上ります。
カート内には音声ガイドが備わっていて、古宇利島の歴史や観光スポットなどの案内が流れます。
オーシャンタワーの1階には古宇利島資料館、2-3階には屋内展望フロア、屋上には展望デッキが設けられています。
海抜82mからの眺めは目を見張るほど美しく、見渡す限りの青海原を心ゆくまで堪能できます。

古宇利島で語り継がれる沖縄版「アダムとイブ」の神話伝説

古宇利島には、その昔、天から男女二人の子どもがこの地降り立ち、彼らの子孫が琉球人の祖となったという、人類発祥の神話が残されています。
この神話に登場する男女が、「エデンの園」のアダムとイブを思わせることから、「沖縄版 アダムとイブの伝説」と呼ばれています。
諸説あるものの、このような伝説があることから、古宇利島は別称「恋島」や「神の島」とも呼ばれています。

住所 〒905-0406
沖縄県国頭郡今帰仁村古宇利
電話番号 0980-56-2256
営業時間 (古宇利オーシャンタワー):9:00 ~ 18:00 (最終入園 17:30)
アクセス 那覇空港 →那覇西道路/国道58号、県道82号、国道330号 から 沖縄自動車道 に入る
→ 沖縄自動車道 →沖縄自動車道許田I.Cから国道58号へ→真喜屋(交差点)
→ 県道110号から屋我地島に入る→古宇利大橋

海に浮かぶ神域を訪れる「波上宮」

波上宮_沖縄
空港からも程近い那覇市にある波上宮は、琉球王国時代から人々の信仰を集めてきた由緒ある神社です。
地元民からは、「なんみんさん」や「ナンミン」という名で親しまれ、正月や節分、5月の例大祭では多くの参拝客で賑わいを見せます。
サンゴ礁の崖端に鎮座するその佇まいは、まるで海の上に浮かんでいるようで、崇高な雰囲気を醸し出しています。

沖縄総鎮守で琉球国新一の宮

波上宮の由来は、遥か昔「海神の国(ニライカナイ)」の神々に、人々が豊漁や豊穣を祈りを捧げたことに始まります。
かつて、中国や朝鮮、東南アジア諸国との交易基地であった那覇港。
その港を見守るように鎮座していた波上宮は、琉球王府からも篤い尊崇を受けていました。
そのため、琉球王国において特別な扱いを受けた神社「琉球八社」のうちの一つに選ばれ、その中でも最も格式の高い神社として「琉球国新一の宮」に認定されました。

巌々とした崖壁に朱色の社殿が際立つ神社

波上宮の社殿は、色鮮やかな赤い瓦と白い漆喰の外観が印象的な神社です。
沖縄の青い空と海に、朱色の拝殿がひときわ目を引き、波之上臨海道路から本殿を望む眺めは、フォトスポットとして人気があります。
波上宮の主なご利益は良縁結びですが、その他にも、交通安全や安産祈願、子孫繁栄など多岐にわたっています。
また、波上宮の並びにある「波の上ビーチ」では、波上宮の拝殿を遠目に見ながら海水浴やバーベキューを楽しめます。

拝殿両脇に鎮座する守護獣「シーサー」

波上宮の拝殿の両側には、沖縄のシンボルとも言えるシーサーが、守護獣として置かれています。
シーサーが、沖縄に伝来した由来には諸説ありますが、13世紀~15世紀にシルクロードを経て中国から伝わってきたと言われています。
悪霊などの魔よけとして、民家の屋根や門に設置してあるのが一般的です。
しかし、シーサーには複数の種類があり、権威の象徴として城に設置されるシーサーを「宮獅子」、村や町を守るために村落の入り口や高台に設置されるシーサーを「村落獅子」と言います。
日本の一般的な神社に置かれている狛犬と同様に、シーサーもまた雄と雌の2体置かれることがほとんどです。
雄は、沖縄の悪霊を追い払ったり、噛みついたりするために口を開います。雌は、幸福を呼び込みその幸せを逃さないようにと口を閉じています。

住所 〒900-0031
沖縄県那覇市若狭1-25-11
電話番号 098-868-3697
営業時間 社務所9:30〜16:30
アクセス 那覇空港駅 →ゆいレール てだこ浦西行→ 旭橋駅 →(徒歩約15分)→波上宮

昔ながらの沖縄を余すところなく満喫する!「琉球村」

恩納村にある琉球村は、琉球王国時代から脈々と受け継がれてきた沖縄の文化や芸能を、見たり体験したりできるレジャー施設です。
村内は、赤煉瓦の古民家や製糖工場、窯場など、昔ながらの建造物が建ち並び、昔の沖縄の暮らしをそっくりのまま再現しています。
他にも、民謡や琉球芸能が見られるアトラクションエリア、染物や織物といった沖縄の伝統工芸に触れられる体験エリア、沖縄名物からB級グルメまで堪能できるグルメコーナーがあります。
この異国情緒あふれる世界観の中で、大人から子どもまで心ゆくまで楽しむことができます。

躍動感あふれる舞いが印象的!「エイサー演舞」

琉球村の中で見どころの一つとなるのが、アトラクションエリアで開催される「エイサー演舞」です。
エイサーは、旧盆に先祖供養の祈りを込めて舞う沖縄の伝統芸能のことを言います。
かつては、沖縄の地域ごとの青年会が、家内安全や健康を祈願して踊りながら家々を練り歩いていました。
青年会それぞれに踊りの型を持っていて、太鼓の音に合わせて舞う「太鼓エイサー」や、和楽器を使わず踊り手のみで構成された「手踊り」などがあります。
琉球村で披露される「エイサー演舞」は、伝統的な舞いにオリジナリティーを加えた独特なエイサーで、大太鼓をはじめとした様々な和楽器が音高らかに鳴り響きます。
なんといってもエイサー隊の魅せる、一糸乱れぬアクロバティックな舞は圧巻です。

築200年を超える琉球古民家を歴訪する

琉球村内には、かつて実際に使われていた古民家が立ち並んでいて、琉球古来の生活模様に触れることができます。
どれも沖縄各地から移築してきた古民家で、中には国登録有形文化財に指定されているものもあります。
屋内では、紅型や琉球藍染の体験をしたり、三線の弾き語りを聴きながら食事を楽しんだりすることができ、五感全てで沖縄を体感できます。

沖縄の王道グルメを堪能できる「きじむなぁ食堂」

琉球村に隣接する、ドーム型施設「沖縄の駅チャンプルー」には、沖縄の定番メニューや旬の食材を使った料理が楽しめる「きじむなぁ食堂」があります。
開放的な雰囲気の漂う食堂の前には、舞台が設置されており、時間帯によって食事をしながら芸能・民謡ショーを楽しむことができます。
食堂の周辺では、琉球衣装を着て写真撮影ができる貸衣装ブースや、琉球ガラスを使ったアクセサリー作りなどを楽しめる体験ブースがあります。
他にも、ここでしか購入できない土産物や特産品が販売されているので、夏の思い出に一つ手に取ってみてはいかがでしょうか。

住所 沖縄県国頭郡恩納村山田1130
営業時間 9:00~17:30(最終受付17:00)
料金 大人(16才以上)1,500円、高校生1,200円、小中学生600円、 6才未満は無料
※高校生料金は学生証の提示が必要。
電話番号 098-965-1234
アクセス 那覇空港国内線旅客ターミナル前 →[沖縄バス]120番名護西空港線(共同運行)(名護バスターミナル行)→琉球村

夏の定番スイーツ 沖縄ぜんざいを味わう「富士家 泊本店」

「富士家 泊本店」は、沖縄の伝統菓子である沖縄ぜんざいの専門店です。
静かな住宅街の中、色鮮やかに描かれた個性的な壁画が、ひときわ目を引きます。
一方内装は、レトロなアイテムに囲まれ、ノスタルジックな雰囲気に包まれています。
かき氷の上に、甘い煮豆と白玉を乗せていただく沖縄ぜんざいは、沖縄の夏の暑さを忘れさせてくれます。
ほっと一息つける空間で味わう「富士家 泊本店」の沖縄ぜんざいは、一度はぜひ試していただきたい逸品です。

夏の暑さを乗り切るための伝統菓子に端を発する

ぜんざいといえば、寒い季節に恋しくなる温かいスイーツのイメージが強いですが、沖縄ぜんざいは一味違います。
沖縄ぜんざいは、かき氷に甘い煮豆や白玉を乗せ、冷たくして食べる夏定番のスイーツです。
もともとは、「あまがし」という緑豆と大麦を甘く煮て冷やしたものが、沖縄ぜんざいの原形と言われています。
子どもの健やかな成長を願う行事食として食べられていた「あまがし」は、解熱や食欲増進作用があり、沖縄の厳しい夏を乗り切るためには欠かせないものでした。
しかし戦後、米軍物資として普及した金時豆が煮崩れせず材料として使いやすかったため、緑豆に取って変わりました。
また、冷蔵庫が普及したことでかき氷をトッピングするようになり、今の沖縄ぜんざいが定着したといいます。

厳選された金時豆と白玉がかき氷にマッチ!

「富士家 泊本店」の沖縄ぜんざいには、黒糖、抹茶、ミルクなど様々なフレーバーがあります。
その中でも、圧倒的人気を誇るメニューは、「富士家ぜんざい」です。
「富士家ぜんざい」は、豆の煮汁で作られた手作りのかき氷に、白玉と金時豆をかけていただきます。
添加物は一切使用せず、圧力鍋でふっくらと仕上げられた金時豆と白玉が、絶妙にマッチします。
別途料金で、練乳やバニラアイスなどお好みのトッピングを追加できる楽しみもあります。

店主の優しさにあふれたこだわりスイーツ

「富士家 泊本店」の沖縄ぜんざいは、ぜんざいの材料や作り方もさることながら、ぜんざいを入れる容器にまでこだわりが詰まっています。
保冷性に優れたタンブラーを独自に開発し、かき氷はタンブラーに、豆と白玉はガラスの器にそれぞれ分けられ、運ばれてきます。
氷の硬さも、食べやすさと溶けにくさのバランスを考え、シャーベット状にしてから包丁で削っているそうです。
細部にわたってこだわる訳は、最後の一口まで一番美味しい状態で食べてもらいたい、という店主の想いがあるからです。
今や沖縄ぜんざいは、沖縄各地で食べられる定番スイーツですが、「富士家」のぜんざいは店主の優しさとこだわりが詰まった逸品です。

住所 沖縄県那覇市泊2-10-9
電話番号 098-869-4657
営業時間 11:00~21:00(L.O)
アクセス 那覇空港 →ゆいレール(てだこ浦西行)→ 美栄橋駅から徒歩15分

まとめ

夏の沖縄旅行で一度は訪れたい観光スポットを5つ紹介しました。
かつて、琉球王国が独自に紡いできた歴史と文化に触れることは、他では体験することができない沖縄観光ならではの魅力です。
観光地を訪れる前に、その地に伝わる神話や今でも根付いている信仰などをリサーチしておくと、旅行がより一層楽しいものになります。
沖縄の夏の日差しは、非常に強く日傘や日焼け止めなどの日焼け対策は必要不可欠です。
また、8月になると台風の影響を受けやすくなるため、6月もしくは7月の方が天候に左右されず旅行を楽しめるでしょう。