LCC(ローコストキャリア)は、格安な料金で飛行機を利用できる新しいスタイルの航空会社として、ビジネスや旅行にと多くの方が利用しています。
しかしながら、大手航空会社との違いや安さの理由など、初めてLCCを利用する方にとっては疑問がつきないのではないでしょうか。
ここでは、初めて格安航空券の予約を検討中の方のために、LCCの魅力についてご紹介します。
飛行機の「LCC」とは?格安航空会社の基礎
飛行機の「LCC」とは何を指し、どのような航空会社を意味するのでしょうか。
LCCの基本を理解するために、定義や安全性について解説します。
「Low Cost Carrier」の意味と定義
「LCC」とは「Low Cost Carrier(ローコストキャリア)」の略で、日本語では「格安航空会社」と呼ばれます。
ANA(全日空)やJAL(日本航空)といった大手の航空会社と異なり、必要最低限のサービスに絞ることで、航空券を大幅に安く提供しているのが特徴です。
日本では1980年代後半から国内航空の規制緩和が進み、1996年にスカイマークが設立。
これを皮切りに、ピーチやジェットスター・ジャパンなどのLCCが次々と登場し、世界でも1990年代以降に拡大してきました。
「飛行機は高い」と感じていた人々にとって、LCCの登場は空の旅のハードルを大きく下げる転機となったのです。
なぜ安い?LCCの安全性
LCCの航空券が安いのは、運営コストを徹底的に抑えているからです。
機材を同一機種に統一して整備費用を削減しているほか、機内サービスや預け手荷物をオプション制にして、必要な人だけが追加費用を払う仕組みを採用しています。
また、空港での滞在時間を短縮して回転率を上げるなど、運行効率の面でも工夫しているのです。
一方で「料金が安い分、安全面は大丈夫?」と不安に思う人もいるでしょう。
しかし、LCCも大手航空会社と同様に、国の厳しい安全基準を満たして運航しています。
パイロットや整備士の資格要件も変わらず、機材の点検・整備も法律に基づき実施されており、決して「安かろう、悪かろう」ではありません。
FSC・MCCとの違いを比較
飛行機にはLCC以外にも、「FSC(フルサービスキャリア)」「MCC(ミドルコストキャリア)」と呼ばれる航空会社があります。
FSCは世界中に路線を持ち、無料の手荷物預けや機内食、座席指定など、充実したサービスが特徴の大手航空会社です。
日本ではANAやJALがFSCにあたります。
安全性やサービスの質に定評があり、ビジネスや長距離旅行に最適ですが、その分運賃は高めです。
MCCはLCCとFSCの中間に位置し、比較的リーズナブルな価格で一定のサービスが受けられます。
座席指定や手荷物が無料だったり、主要空港から乗れたりするなど、利便性も高いのが魅力です。
以下の表で、3社の一般的な違いを整理してみましょう。
項目 | LCC(ピーチ等) | MCC(スカイマーク等) | FSC(ANA・JAL等) |
---|---|---|---|
運賃 | 非常に安い | やや安い | 高め |
手荷物 | 有料 | 一部無料 | 一部無料 |
座席指定 | 有料 | 一部無料 | 一部無料 |
機内サービス | 有料 | 簡易な無料サービス | 無料で充実 |
路線網 | 限定的(近距離中心) | 中程度 | 国内外に広範囲 |
欠航時の対応 | 振替対応が限定的 | 柔軟な場合もあり | 柔軟かつ手厚い |
※航空会社によって差があります
日本・アジアの主要LCC一覧
日本やアジアでは多くのLCCが活躍しており、それぞれに特徴があります。
以下に代表的なLCCをまとめました。
社名 | 拠点 | 特徴 |
---|---|---|
ピーチ(Peach) | 日本 | 国内外の人気都市へ運航、関西拠点 |
ジェットスター | 日本/豪州 | 成田・関空から多方面へ、セールも多数 |
スプリングジャパン | 中国/日本 | 成田拠点、中国方面に強み |
エアアジア | マレーシア | 国際線が充実、乗り継ぎで格安旅行も可能 |
タイ・ライオンエア | タイ | 東南アジア諸国間の移動に便利 |
いずれも料金・就航地・サービス内容に違いがあるため、旅行のスタイルや目的に合わせて選ぶのがおすすめです。
LCCの基本的な料金体系
LCCの料金は一見安く見えますが、仕組みを正しく理解しないと予想外の費用が発生することもあります。
ここでは基本運賃やオプション、手数料の全体像を解説します。
基本運賃
LCCの基本運賃は、移動するために最低限必要なコストで構成されています。
特に「乗るだけ」に特化しているのが最安値プランです。
座席を確保し、目的地まで飛行機で移動するだけのプランなので、預け手荷物や座席指定、機内食などは含まれていません。
その分基本運賃が安いのが、LCC最大の魅力。
国内線が数千円台、国際線でも1万円以下で乗れるなど、大手では見られない価格設定があります。
基本運賃は需要と供給に応じて日々変動しますが、セール時には驚くほど安いチケットが出ることもあるのです。
ただし、安いからそれだけでお得とは限らず、必要なオプションが多ければ合計費用が高くなる場合もあります。
自分に必要なサービスを見極め、総額で判断するのが大切です。
有料オプション
LCCでは、快適性や利便性を高めるサービスはすべて「オプション制」になっているのが一般的です。
代表的な有料オプションを以下に一覧します。
- 機内持ち込み荷物:多くの場合7kgまで無料。7kg超の荷物は別料金が必要
- 預け荷物(受託手荷物):原則有料
- 座席指定:前方座席、非常口席、足元が広いシートなどは追加料金が必要
- 機内食・ドリンク:原則有料。ルールの範囲内なら飲食物の持ち込み可能
- 予約の変更やキャンセル:最安値プランは変更不可。一部有料で変更できる場合有り
最安値プランで格安航空券を予約しても、有料オプションをたくさんつけると、上位のプランにしたほうが安かった……ということになりかねません。
自分のニーズに合わせてカスタマイズできる点はメリットですが、計画的に行う必要があります。
手数料
LCCでは、基本運賃やオプション料金のほかに各種手数料が発生する場合があります。
特に注意したいのが以下のポイントです。
項目 | 内容 |
---|---|
支払手数料 | クレジットカード払い・コンビニ払いに発生することがある |
予約変更・キャンセル手数料 | 変更や払い戻しは不可、または高額な手数料がかかる |
空港カウンター手数料 | オンライン手続きでは無料でも、カウンター利用で追加料金が発生することがある |
預け荷物の超過料金 | 重量超過により、空港で高額な超過料金がかかることがある |
LCCで予約する際は、手数料の合計まで含めて計算しなくてなりません。
特に「あとからプランを変えたい」「予定が変わってキャンセルしたい」といった、計画を変える際に手数料が発生しやすいので、十分注意しましょう。
LCCのメリット・デメリットは?向いているのはこんな人
LCCのメリット・デメリットを理解した上で、自分に本当に合っているかを判断しましょう。
ここではLCCの特長をまとめ、どんな人に向いているのかを具体的に紹介します。
LCCのメリット
LCCの最大のメリットは、やはり航空券の安さです。
早期予約やセール時を狙えば、国内線は片道1,000円から、国際線でも片道6,000円台など、圧倒的な安さで乗れることがあります。
LCCの格安航空券を利用すれば遠方への旅行がしやすくなり、日帰り旅行や週末のちょっとしたお出かけも気軽に行けるなど、旅のハードルが大きく下がるでしょう。
特にLCCは地方空港にも就航していることが多く、都市部から離れた観光地への移動手段にも最適です。
近年は国内外を結ぶLCC路線も増え、選択肢が広がっています。
航空券代を抑えることで旅先での体験や宿泊に予算を回せるため、旅行の質が高まる効果も期待できるでしょう。
LCCのデメリット
LCCには注意すべきデメリットもいくつかあります。
まず、機内の快適さでFSCに劣る点は否めません。
座席の間隔が狭く、長距離移動では疲れやすいという声も多く聞かれます。
機内サービスは基本的に有料なので、飲食やエンタメを楽しみたい場合はコストがかさみがちです。
また、LCCはFSCよりも遅延リスクが高い傾向にあります。
限られた飛行機で運行しているため、天候や機材のトラブル時に振替便の確保が難しかったり、一度キャンセルになると次の便まで長時間待たされたりする恐れもあるのです。
LCCは追加費用がかかりやすい点も注意しなくてはなりません。
手荷物の重量超過、座席指定、空港カウンターでの手続きなど、予想外の出費につながることがあります。
「結果的に高くついた」という事態を避けるには、事前の確認が不可欠です。
遅延リスクに関する出典:国土交通省「特定本邦航空運送事業者(※)に関する航空輸送サービスに係る情報公開(令和3年4月~令和3年6月)のポイント」
向いている人・向いていない人の特徴
メリットとデメリットを踏まえて、LCCに「向いている人」「向いていない人」の傾向をまとめました。
自分はどこに当てはまるかの参考にしてください。
判断軸 | LCCが向いている人 | LCCが向いていない人 |
---|---|---|
旅行スタイル | 短距離・短期間・荷物少なめの旅行が中心の人 | 長距離・長時間・荷物が多い旅が多い人 |
優先順位 | 安さ重視の人 | 快適さやサービスを重視する人 |
予定変更の可能性 | 日程変更が少ない・固定の人 | 予定が変わりやすい人 |
求めるサポート | 最低限のサポートがあれば自己管理で対応できる人 | 手厚いサポートを求める人 |
LCCはすべての人にとってベストな選択肢とは限りません。
上手に使いこなすためにも、自分の旅行スタイルや目的に合っているかを見極めることが重要です。
主要LCCを比較!あなたに合う1社は?
日本国内で利用できるLCCの代表格は「ピーチ」「ジェットスター」「スプリングジャパン」です。
それぞれに路線、料金、サービス内容、利用しやすさなどの特徴があります。
3社を比較し、あなたに合う1社を見つけてください。
航空会社 | 最安値プランの 料金 |
主な手数料 | 航路数 |
---|---|---|---|
ピーチ | ミニマム: 4,990円~ |
発券手数料: 640円 ※上位プランは無料 |
国内25路線 国外13路線 |
ジェットスター・ジャパン | Starter: 4,790円〜 |
支払手数料: 690円 (クレジット) |
国内18路線 国外4路線 |
スプリングジャパン | ラッキースプリング: 5,680〜 |
支払手数料: 600円 |
国内2路線 国外7路線 |
※2025年5月26日発成田-新千歳便で比較(2025年4月11日時点)
ピーチ(Peach Aviation)
ピーチは日本初の本格的LCCとして2012年に就航しました。
関西空港を拠点とし、関西圏から日本全国、さらにはソウル・台北・上海などアジアの都市へも就航しています。
社名にも通じるポップなピンク色の機体デザインも特徴の一つです。
日本各地を結ぶネットワークの強さを持ち、セールやキャンペーンも頻繁に実施されるため、こまめにチェックすれば格安旅行に役立ちます。
一方、遅延や欠航時の補償は限定的であるなど、旅行の予定によっては対応しきれない可能性もあるので、理解の上での予約が必須です。
ジェットスター・ジャパン(Jetstar Japan)
ジェットスター・ジャパンは、オーストラリア発のLCCです。
成田空港を拠点に、関西空港、中部国際空港からも多くの路線を展開しています。
国内線のネットワークが豊富で、東京〜大阪・札幌・福岡などの主要路線はもちろん、地方路線も多数運航する会社です。
特に安定した運航本数と利便性の高さは魅力でしょう。
LCCの中でも便数が多く、価格も通年で安い印象があります。
公式サイトではしばしばセールが行われ、過去には就航6周年記念にちなんで6円の航空券セールを開催したこともありました。
欠点としては、他のLCCと同様に手荷物やサービス面での制限があるため、プランの見極めが必要です。
スプリングジャパン(Spring Japan)
スプリングジャパンは中国系LCC「春秋航空」の日本法人であり、成田空港を拠点に運航しています。
2021年にはJALの傘下に入り、日本市場向けのサービス展開を強化しました。
魅力となるのは「中国路線の手厚さ」と「リーズナブルな価格設定」です。
成田~ハルビンや上海など、他社LCCにはない独自のルートを提供しています。
機内の接客も丁寧で、初めての海外旅行でも安心して利用できると評判です。
ただし、国内線の路線数は少なく、用途はやや限られます。
中国旅行を考えている人にはぴったりの選択肢といえるでしょう。
LCC利用時の注意点、節約のコツ
LCCは安さだけに注目し過ぎると、「思ったより高くついた」「予定が狂った」などの失敗につながる恐れがあります。
トラブルを避け、お得に旅をするための具体的なポイントをチェックしましょう。
手荷物サイズと重量を守る
LCCでは、機内持ち込み・預け荷物それぞれに厳格なサイズ・重量制限が設けられています。
基本的に、機内持ち込みは7kgまで、サイズは3辺合計で115cm以内などとされ、これを超えると追加料金が必要です。
空港で超過が発覚すると、高額な追加料金を支払わなくてはなりません。
せっかくの格安航空券が無駄にならないよう、以下の対策をとっておきましょう。
- 出発前に自宅で荷物を測る
- 軽量スーツケースや圧縮袋を活用する
- 荷物が多い場合は「予約時に」オプションをつける
預け入れ荷物のオプションをつける場合は、予約と同時にするのがポイントです。
出発前であっても、あとから追加すると手数料がかかることが多いので気をつけましょう。
空港には早めに着いておく
LCCに乗る際は、できるだけ早めに空港へ着いておきましょう。
FSCに比べて空港スタッフの人数が限られるケースがあり、搭乗ゲートも遠い場所に設けられていることがほとんどです。
そのため移動に時間がかかったり、繁忙期はカウンターが混雑したりすることもあります。
出発時刻の2時間前には空港に到着しておくほか、以下の対策も把握しておきましょう。
- アプリやWebからオンラインチェックインを活用する
- 出発ロビーがある空港ターミナルや階数を確認しておく
- 交通機関の遅延も想定してスケジュール調整する
ピーチはアプリから、ジェットスターはWebやアプリからオンラインチェックインが可能です。
スプリングジャパンはオンラインチェックインに対応していないので注意してください。
遅延・欠航時の返金やルールを知っておく
LCCの返金範囲は、FSCとは異なり限定的な傾向です。
そのため正確なルールを知っておかないと、思わぬところで損をしてしまいかねません。
遅延・欠航となっても宿泊の提供は原則ないなど、旅行先で困るリスクがあります。
予定変更が起こる可能性に合わせてプランを吟味するほか、以下の対策も参考にしてください。
- 遅延が少ない時間帯を選ぶ(午前便が比較的安定)
- 旅程に1日程度の余裕を持たせる
- 払い戻しや代替便の有無などを公式サイトで確認する
コスト削減を徹底しているLCCは、予備機材や人員に余裕がないケースが多く、天候不良やトラブルによる遅延・欠航のリスクがFSCより高いといわれています。
そうしたリスクに備えるためにも、返金ルールの把握や事前準備を徹底しましょう。
早めの予約を心がける
LCCの運賃は基本的に「早ければ早いほど安い」仕組みになっています。
空席の状況などに応じて価格が変動するため、席が埋まるほど高くなる、つまり出発が近づくにつれて価格が上昇しやすいのです。
LCCならではの運賃変動の仕組みを押さえ、対策を講じておきましょう。
- 出発2〜3ヶ月前には予約する
- 各社のメールマガジン・公式SNSでセール情報をキャッチする
- 予約比較サイトを使って価格を随時比べる
セールが開催されると、人気の路線はあっという間に売り切れる場合も珍しくありません。
予約そのものはもちろん、情報のキャッチも早め早めを心がけましょう。
予定変更は極力しない
LCCの最安値プランの多くは、予約後の日付変更・キャンセルができなかったり、高額な手数料が発生したりします。
FSCのように柔軟な変更対応は期待できないため、予定変更がないよう綿密に計画しなくてはなりません。
- 日程をしっかり確定してから予約する
- 変更がありそうならキャンセルできる上位プランにする
- 変更オプションや旅行保険なども視野に入れる
たとえばピーチであれば、欠航でホテル宿泊が必要になった際の費用などを補償する「Peach旅行保険」を提供しています。
予定変更がないのが理想ですが、少しでも可能性があるなら事前にしっかり検討してみてください。
まとめ:LCCで格安旅行が身近なものに
LCCとは、ローコストキャリア(Low-cost carrier)の略で、大手航空会社よりも大幅に運賃を下げた格安航空会社の総称です。
使用する機材を統一したり、必要以上のサービスをカットしたりすることで、コストの削減と効率化に成功しています。
自分に合ったLCCで格安航空券を予約すれば、飛行機を使った旅行がより身近なものになり、手ごろな価格で各地での観光を楽しめるでしょう。