日本の神話の舞台としてたびたび登場する島根県は、中国地方の北部にある東西に長い県です。「神々の世界」ともいわれる出雲大社から世界的な評価を受ける足立美術館まで、知れば知るほどすごい島根県。この秋は、島根県の魅力に出会う旅行をしてみてはいかがですか?今回は秋に訪れたい島根県の観光スポットを紹介します。

日本全国の神様が集まる!神在月の「出雲大社」へ

出雲大社_島根県
縁結びの神社として広く知られている「出雲大社」(いずもたいしゃ、またはいずもおおやしろ)。大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)が祀られており、日本最古の歴史書といわれる『古事記』に登場する古社です。
古来より、出雲の地は「神々の世界」と呼ばれてきました。出雲大社の本殿は日本の神社建築のなかでも日本一のスケールを誇りますが、はるか昔はさらにこの4倍もの規模を誇る途方もないスケールの神社だったとの記録が残っています。このことからも、出雲大社が日本のなかでも特に重要な存在だったことがわかります。
なお、出雲大社の参拝方法はほかの神社とは少し異なるので注意が必要です。神社を参拝するときは二礼二拍手一礼が一般的ですが、出雲大社境内ではどの社でも二礼四拍手一礼で参拝をしましょう。

秋は出雲大社に日本中の神様が集います

神無月と呼ばれる旧暦10月ですが、この時期出雲だけは「神在月」といいます。その理由は、日本全国およそ八百万の神様が出雲に一斉に集結するからです。出雲に集まった神々は、人の縁について話し合う「神議」(かみはかり)を行います。これが、出雲大社が縁結びの神社と呼ばれるようになった理由でもあります。
神在月には「神迎祭」「神在祭」「神等去出祭」と呼ばれる3つの祭りが出雲の各神社で行われ、出雲神社では「神在祭」が行われます。いつもにも増して神々しい雰囲気の秋の出雲大社では、神様の気配がより強く感じられるかもしれません。

「ぜんざい」は出雲が発祥!

人気の和スイーツ、ぜんざいは実は出雲が発祥です。神在祭のときにふるまわれた「神在餅」(じんざいもち)に、なまりが加わって「ぜんざい」という名称で京都に伝わったといわれています。出雲大社の表参道「神門通り」にはぜんざいの専門店や、ぜんざいにアレンジを加えた変わり種スイーツのお店が並びます。参拝後のおやつにいかがでしょうか。

出雲大社の概要

■住所:島根県出雲市大社町杵築東195

■電話番号:0853-53-3100

■参拝可能時間:6:00~20:00

出雲空港からのアクセス:
・出雲空港より出雲大社行きの空港連絡バス(約40分)
または出雲空港より出雲市駅行きの空港連絡バス(約25分)
―出雲市駅より一畑バス(出雲大社・日御碕・宇竜行き)にて「正門前」下車(約30分)
・出雲空港よりタクシーまたはレンタカー(約30分)

日本一の庭園がここに!「足立美術館」で芸術の秋を

安来市の郊外にある「足立美術館」(あだちびじゅつかん)。この美術館が国内外から注目を集めている理由のひとつが、敷地内にある庭園です。アメリカの日本庭園の専門誌『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』が選ぶ日本庭園ランキングにおいて、17年連続日本一を獲得しているのです。美術品と庭園が生み出す自然美、ふたつの「美」に浸ることのできる、とっておきの美術館です。

庭園と背景の山々が織りなす紅葉の景色

秋には、庭園の紅葉したモミジと、庭園の背後にそびえる紅葉で赤く染まった山々の調和美を楽しめます。敷地内にある窓「生の額絵」と「生の掛軸」から、庭園をのぞいてみましょう。庭園が額縁に入れられた絵画のように見え、一幅の絵画として紅葉を楽しむことができます。また、お茶室の「寿立庵」(じゅりゅうあん)で、静かにお茶を味わいながら庭園の美しさに見とれるのもよいでしょう。

秋にしか見られない絵があります

足立美術館はもちろん、美術館としての魅力にもあふれています。メインは横山大観の作品コレクション。絢爛豪華な「紅葉」や、富士を描いた「不二霊峰」などの横山大観の作品が、秋の時期だけに特別公開されます。足立美術館は、秋の自然美と絵画に描かれた秋の美しさ、両方の美しさに出会える特別な空間です。

足立美術館の概要

■住所:島根県安来市古川町320

■電話番号:0854-28-7111

■営業時間:[4月~9月] 9:00~17:30
[10月~3月] 9:00~17:00

■米子空港からのアクセス:
・米子空港より米子駅行きの空港連絡バス(約30分)
―米子駅よりJR山陰本線で安来駅(約10分)
―安来駅より足立美術館行き無料シャトルバス(約20分)
・米子空港よりタクシーまたはレンタカー(約45分)

赤く染まる空と湖!「宍道湖」の夕日鑑賞スポット

宍道湖_島根県
「宍道湖」(しんじこ)は、日本で7番目に大きな湖です。もともと海だったところに砂などが堆積したことによって独立した湖になったので、湖水はわずかに塩分を含んでいます。この水質が豊富な魚類の生息をもたらしています。秋にぜひ食べたいのが、「ゴズ」と呼ばれる魚。一般にはハゼという名称で知られている魚です。秋に宍道湖に行くと、多くの人が湖畔にずらっと並び秋の味覚を求めてゴズ釣りをしている光景を目にするでしょう。
また、宍道湖で見逃せないのが湖面を赤く染めながら沈む夕日です。ここでは日本の夕日百選に選ばれた、宍道湖の美しい夕日を見られる絶景スポットをいくつか紹介します。

島根県立美術館から夕日を見る

「夕日につつまれる美術館」がコンセプトの島根県立美術館。西の湖側がすべてガラス張りになっている1階のロビーは入場自由です。日が暮れはじめると少し肌寒く感じることも多い秋の気候ですが、寒さを気にせず屋内から夕日を楽しめます。有料の展示エリアに入ると、2階の展望テラスからの夕日を眺めることができます。

岸公園から夕日を見る

島根県立美術館と宍道湖の間にある芝生の公園を「岸公園」といいます。美術館所蔵の個性的なオブジェが芝生のなかに置かれており、美術品と夕日をコラボレーションさせた雰囲気のある写真を撮ることができるフォトスポットでもあります。オブジェのひとつ、「宍道湖うさぎ」は湖から2番目のうさぎに触ると幸福が訪れるといわれています。宍道湖の夕日の思い出とセットで、幸せのうさぎにも触れておきましょう。

「とるぱ」から夕日を望む

「とばる」とは、湖畔を歩いたり腰掛けたりできる、宍道湖の夕日を眺めるために造られたスペースで、宍道湖に沈む夕日と、宍道湖のシンボル「嫁ケ島」や「袖師地蔵」が一緒に見ることができます。宍道湖に来たらぜひ写真に収めたいアングルです。

クルーズ船に乗って夕日を見る

およそ1時間かけて宍道湖をクルーズする観光遊覧船「はくちょう」を使用する「サンセットクルーズ」は、毎日日没前に出港し、その日の夕日のベストポイントへ連れていってくれます。夕日に照らされた湖のキラキラとした光に包まれながら、日が沈んでいくのを見届けるのもよいでしょう。

宍道湖の概要

■住所:島根県松江市袖師町

■電話番号:0852-27-5843(松江観光協会)

■出雲空港からのアクセス:
・出雲空港より松江駅行きの空港連絡バス(約35分)―松江駅より徒歩(約15分)
または松江駅より松江市営バス(南循環線内回り)で「 県立美術館前」下車(約5分)
・出雲空港よりタクシーまたはレンタカー(約30分)

水の都が光に包まれる!秋の「松江城」

松江城_島根県
「松江城」(まつえじょう)は、豊臣秀吉や徳川家康に仕えた堀尾吉晴により築かれました。日本に現存する12の天守のひとつ松江城は、山陰地方に残る唯一の天守で、2015年には国宝に指定されました。重厚感と威厳にあふれる天守の最上階からは、「水の都」と呼ばれる松江の街並みや宍道湖を見渡すことができます。

秋冬限定のこたつ舟に乗ってポカポカ松江堀川巡り

松江城の周りのお堀では、小さな遊覧船に乗って城下町のたたずまいと立派な石垣を眺める「堀川巡り」が楽しめます。そしてこの堀川巡りの秋冬限定のお楽しみが「こたつ舟」。その名の通り、こたつに入りながら堀川巡りができます。冷たい風が吹く日も寒さを気にせず、ポカポカ温まりながらの船の旅はこの時期だけの楽しみ方です。

松江城と松江の町が光で包まれる注目イベント

松江の秋の一大イベントが「松江水燈路」((まつえすいとうろう)。松江城周辺と松江の街が行燈などの淡い光で照らされるライトアップイベントです。お祭りの期間中に並べられる数多くの行燈は市民やアーテイストによる作品。期間中は堀川遊覧船の夜間運航もあるので、光に包まれた船旅も楽しめます。
イベント期間中は松江城周辺でもさまざまなイベントが催されます。おすすめは武家屋敷で見ることのできるライトアップされた竹林と行燈。光に照らされた竹林はとても幻想的です。

松江城の概要

■住所:島根県松江市殿町1-5

■電話番号:0852-21-4030

■営業時間:※本丸への入場
[4月~9月]7:00~19:30
[10月~3月]は8:30~17:00

■出雲空港からのアクセス:
・出雲空港より松江駅行きの空港連絡バス(約35分)
―松江駅よりレイクラインバスで「国宝松江城(大手前)」下車(約10分)
・出雲空港よりタクシーまたはレンタカー(約30分)

情緒あふれる景色が続く!「津和野」の町散歩

津和野藩の城下町として栄え、現在では「山陰の小京都」とも呼ばれる「津和野」(つわの)。武家屋敷が建ち並ぶ情緒ある街並みには、少し歩くと立ち止まりたくなる景色や魅力がいっぱいあふれています。秋のそぞろ歩きにはもってこいのスポットです。

殿町通り

なまこ壁や白壁が続く、城下町だった時代のたたずまいを感じることができる殿町通りには、津和野という地名の由来となった「つわぶき」の花が通り沿いに植えられています。また秋には殿町通りのイチョウ並木が色づき、白い壁にイチョウの黄色が映える光景に出会えます。森鴎外が通ったことで知られる藩校養老館や日本の街並みに突如として現れるゴシック調のカトリック教会など、建築物巡りも楽しめる通りです。

本町通り

殿町通りがかつて武家の生活するエリアだったのに対して、本町通りは町人の生活エリアでした。今でもその名残として昔ながらの商店が営業を続けており、地元の人の生活を感じられる通りです。本町通りで訪れたいのが、「古橋酒造」。津和野の街で古くから親しまれ続けてきている酒蔵です。津和野産のお米を使って造られた「初陣」は津和野の見逃せない名産品です。秋にはこの時期だけの「秋おろし」が販売されます。

太皷谷稲成神社

落ち着いた津和野の街並みのなかでひときわ目を引く朱色の神社が太皷谷稲成神社です。見どころは263段の石段が続く表参道にある、およそ1000本の朱塗りの鳥居です。朱色のトンネルをくぐりきった先からは、津和野の街が一望できます。

太皷谷稲成神社は、願望成就にご利益があるとされています。全国にある稲荷神社は一般的に「稲荷」と記されますが、この神社では願い事が成就するようにとの願いを込めて「稲成」と記されています。太皷谷稲成神社へは、大切なお願い事を携えてお参りをしましょう。

津和野の概要

■住所:島根県鹿足郡津和野町

■電話番号:0856-72-1771(津和野町観光協会)

萩・石見空港からのアクセス:
・萩・石見空港より津和野駅行きの乗合タクシー(約50分)
・萩・石見空港よりタクシーまたはレンタカー(約40分)

島根の奥深く!知る人ぞ知る里山「奥出雲」

島根県の内陸部に向かって進んでいった先に、ぽっかりと開けた地域があります。それが棚田の街「奥出雲」(おくいずも)です。人里離れたこの街には、はるか昔からずっと続いている人々の生活に触れることができます。現代の便利でハイテクな生活から少し離れて、里山の暮らしに触れてみる旅もよいでしょう。

奥出雲にはおいしいものがいっぱい

奥出雲は「西の横綱」の異名をもつ仁多米の産地です。奥出雲の風景を象徴する棚田で栽培される仁多米は、国内の品評会で数多くの賞を受賞している注目のブランド米。キラキラとしたツヤと、豊かな甘みは一度食べるとほかのお米が食べられなくなってしまうともいわれています。ぜひ産地でその味を試してみて下さい。
奥出雲にはほかにもすりおろした大豆をみそ汁に入れた「呉汁」(ごじる)と呼ばれる郷土料理やそばが有名です。きれいな空気と水のなかで作られたお料理はどれも絶品です。

奥出雲美肌温泉郷で温まろう

奥出雲は山間部にあるため、秋が深まるにつれて平地よりも冷え込みは厳しくなります。そこでおすすめしたいのが、奥出雲にある「斐乃上(ひのかみ)温泉」です。通称「日本三大美肌の湯」を源泉かけ流しで楽しめます。トロ味のあるお湯に浸かればお肌はツヤツヤに。豊かな湧出量を誇る温泉と、きれいな水に恵まれた土地で育まれた食べ物で、心身ともにきれいにリフレッシュしてみてはいかがでしょうか。

奥出雲の概要

■住所:島根県仁多郡奥出雲町

■電話番号:0854-54-2260(奥出雲町観光協会)

■営業時間:

■出雲空港からのアクセス:
・出雲空港より出雲市駅行きの空港連絡バスで「直江駅入口」下車(約15分)
―直江駅よりJR本線で宍道駅(約10分)―宍道駅より木次線で出雲三成駅(約110分)
・出雲空港よりタクシーまたはレンタカー(約45分)

まとめ

島根県の秋におすすめの観光スポットを紹介しました。島根県は隣の鳥取県と混同されたり、「どこにあるかわからない都道府県」No.1に選ばれたりと、しばしば不本意な扱いを受けることがありますが、旅行で訪れるとその印象はがらりと変わるはずです!ぜひ八百万の神々が集まる秋の島根県を楽しんで下さい。