かつて「伊予国(いよのくに)」と呼ばれた愛媛県は、現在でもその名残で県域を3つに分けて東予・中予・南予と呼ばれており、それぞれに美しい自然に恵まれています。

特に瀬戸内海と宇和海の美しい海と四国山脈に連なる高原は、夏にこそ訪れたい人気の観光地が目白押し。そこで今回は、愛媛県の中でも夏旅にオススメの観光スポット7選を紹介します。

四国カルストで、天空の道を行く

四国カルスト県立自然公園

愛媛県の南予エリアと高知県をまたぐ標高1,400mの高原に位置している「四国カルスト」は、夏でも涼しく過ごせる避暑地として知られています。また、山口県の秋吉台・福岡県の平尾台とともに「日本三大カルスト」のひとつに数えられていることでも有名です。

そもそも「カルスト」とは、石灰岩などの岩石が長い年月の間に雨や風によって少しずつ浸食されてできた地形のこと。緑の草原の中に点在する白い岩石は「羊の群れ」と表現されることもあり、のどかで広大な風景が広がっています。

そんな四国カルストの見どころは、高地から周囲をグルリと見渡せる360度の大パノラマ。中でも一番の人気スポットが、「姫鶴平(ひめづるだいら」の展望台で、周囲をさえぎるものが何もない場所からの眺めはまさに絶景です。訪れる人のほとんどがこの場所から写真を撮るといわれるほど、絶好の撮影スポットになっています。

松山方面からのアクセスは、国道30号線〜国道440号線をひたすら登る山道で、視界が開けた瞬間の開放感は感動的ですらあります。カルスト高原を東西に走る県道383号線は「天空の道」とも呼ばれていて、爽快なドライブやツーリングのメッカになっています。

また、高原を渡る風を感じながらのハイキングもオススメです。周辺には樹齢600年を超えるトチの大木やブナの原生林があったり、湧水や渓谷など水辺のスポットなどが点在していたり、変化に富んだ景色を眺められます。高低差はあまりありませんから、自分のペースで気ままに歩くことができますよ。


四国カルスト

住所 愛媛県上浮穴郡久万高原町西谷
TEL 0892-21-1111(久万高原町ふるさと創生課)
アクセス 松山空港から自動車で1時間45分

潮風を受けながら、しまなみ海道で爽快サイクリング

しまなみ海道

本州と四国を結ぶ「本州四国連絡橋」は全部で3ルートありますが、そのうちの1つ「瀬戸内しまなみ海道」とも呼ばれる「西瀬戸内自動車道」は、広島県尾道市と愛媛県今治市の間に浮かぶ島々を7つの橋で本州と四国を結んでいます。本州から四国まで徒歩や自転車で渡れるのはこのルートだけ。世界的にも珍しい海の上の自転車歩行者用道路として外国からも多くの観光客が訪れています。

しまなみ海道に併設されている自転車歩行者道路は、総延長なんと約80km。瀬戸内海に浮かぶ美しい島々を眼下に眺めつつ、夏場でも爽やかな潮風を受けながら橋を渡ることができます。

サイクリングを楽しむなら、まずは今治市側のサイクリングターミナル「サンライズ糸山」を目指しましょう。ここには約500台のレンタサイクルが用意されています。1日の利用料金は大人1,100円・子ども300円(返却時に返金される保証料金が別途必要)となっており、気軽に海上のサイクリングを楽しむことができます。

しまなみ海道の中でもっとも人気が高いのが、素晴らしい眺望が望める「亀老山(きろうさん)展望台」です。世界初の三連吊橋・来島海峡大橋をはじめ、瀬戸内の島々の間を流れる潮流、海に沈む夕陽など、季節ごと、時間ごとに表情を変える景色はまさに圧巻。アツアツのカップルが訪れる、恋人たちの聖地としても知られていますよ。

海道の沿道には、「ところミュージアム大三島」、「村上水軍博物館」、「平山郁夫美術館」などのミュージアムも充実。さらに、「伯方の塩ラーメン」や「瀬戸田レモンケーキ」、「しまなみドルチェ」など、地元の名産品を使ったご当地グルメも食べられますので、ドライブやサイクリングの途中にぜひ立ち寄ってみてください。


サンライズ糸山

住所 愛媛県今治市砂場町2-8-1
TEL 0898-41-3196
アクセス 松山空港から自動車で1時間10分、JR波止浜駅から送迎あり(土・日祝日・振替休日のみ)

夏でもヒンヤリ涼しい、滑床渓谷

愛媛県が誇る景勝地のひとつが、宇和島市の郊外にある「滑床(なめとこ)渓谷」です。日本最後の清流といわれる四万十川の支流のひとつ目黒川の上流にあり、美しい川や滝の流れと巨大な花崗岩の岩肌が、幻想的ともいえる風景を見せています。周囲を原生林で覆われた渓谷内は夏でもヒンヤリと涼しく、滝から発生するマイナスイオンや森の木々が発散するフィトンチッドの効果に癒されながら、散策を楽しむことができます。

滑床渓谷のハイライトといえるのが、日本の滝百選にも指定されている「雪輪の滝」。巨大な岩肌の上を滑るようにして清流が流れるダイナミックな風景を、間近で見ることができます。周囲には野生のサルも多く生息しているので、突然出くわしても驚かないよう注意してください。

夏の滑床渓谷でアクティビティを楽しみたいなら、キャニオリングがオススメです。キャニオリングとは、ライフジャケットとヘルメットを身につけて、水遊びや岩登りをしながら上流から下流に向かって川を下っていくアウトドアスポーツで、特に雪輪の滝を40mに亘って滑り降りるロングスライダーはスリル満点!子ども連れでも安全に楽しめるファミリー向けのコースもあるので、ぜひチャレンジしてみてください。

滑床渓谷でビジターセンターの役割を果たしているのが、地元のNPO法人が運営している「滑床アウトドアセンター万年荘」。無料休憩所が備わっているほか、ガイドの手配などの相談にも応じてくれます。アマゴやウグイが釣れる管理釣り場もあり、美しい自然の中で1日中楽しむことができるスポットです。


滑床渓谷

住所 愛媛県北宇和郡松野町目黒
TEL 0895-49-1535(滑床アウトドアセンター万年荘)
アクセス 松山空港から自動車で約2時間

真夏の夕陽を追いかけて! 佐田岬メロディーライン

佐田岬半島は、愛媛県の西側から九州に向けてグ〜と伸びた細長い半島。その付け根にあたる八幡浜市から先端の佐田岬を結ぶ国道197線の一部区間は通称「佐田岬メロディーライン」とも呼ばれ、右に瀬戸内海、左に宇和海が眺められる見晴らしの良い道路です。ちなみに余談ですが、この国道197線はフェリーを経由して対岸の大分県までつながっていて、海の上を走る国道としても知られています。

起点となる八幡浜市は、風光明媚な地形と温暖な気候を活かした温州みかんの一大産地。「道の駅・みなとオアシス
八幡浜みなっと」では、温州みかんのほか地元で水揚げされた新鮮な魚介類も並ぶ朝市が開催されているので、まずは立ち寄って見るのもいいかもしれません。

全長約40kmの「佐田岬メロディーライン」は、ゆっくり走っても約1時間のドライブコース。山の稜線に沿った高台にあり、ゆるやかなカーブが続く走りやすいコースです。舗装の一部がタイヤの摩擦音で音楽が流れるメロディー道路になっているので、途中「みかんの花咲く丘」や「瀬戸の花嫁」、「夕焼け小焼け」を口ずさみながら、ゆっくり、のんびり走りましょう。途中に「道の駅伊方きらら館」や「道の駅瀬戸町農業公園」などの休憩スポットもありますよ。

「佐田岬メロディーライン」の終点・三崎港から、さらに車で30分ほど走った先にあるのが、お目当ての「佐田岬灯台」。1918年(大正7年)に作られた豊後水道を臨む白亜の灯台で、晴れた日には対岸の大分県まで見渡すことができる四国最西端にある夕陽スポットです。

駐車場から灯台までは、遊歩道を歩いて20分ほどの距離。結構アップダウンが激しいので、スニーカーなどの歩きやすい靴で行きましょう。そして、灯台から眺める海に沈む夕陽は、まさに絶景!
夏の愛媛県観光の中でも、きっと忘れることのできない光景を目に焼き付けることができるスポットになるでしょう。


佐田岬灯台

住所 愛媛県西宇和郡伊方町正野
TEL 0894-38-0211(伊方町役場産業振興課)
アクセス 松山空港から自動車で約2時間30分

伊予の小京都・大洲を散策する

大洲市は江戸時代、伊予大洲藩の藩庁として栄えた城下町。肱川のほとりには古い街並みが残り、「伊予の小京都」とも称されています。そのシンボルである大洲城の天守閣は、明治時代に一度取り壊されましたが、2004年(平成16年)に復元されたもので、残されていた資料をもとに築城当時の工法で再建された国内でも大変珍しく貴重な建築物で、全国から城ファンが見学に訪れています。毎月第3土曜日には大洲藩鉄砲隊による、勇壮な演舞を見ることができます。

大洲の城下町には昔ながらの町並みが残っており、川沿いに建つ数奇屋造りの「臥龍山荘」や大洲藩主・加藤氏の大名屋敷のまわりに整備された「お殿様公園」などが見どころです。観光人力車が走っているので、レトロな町並みを車夫の解説を聞きながら、のんびり巡ることができますよ。

そして、夏の大洲観光でかかせないのが、岐阜県の長良川、大分県の三隈川とともに日本三大鵜飼いに数えられている「大洲のうかい」です。例年6月から8月の週末に開催される夏の風物誌で、夕方から夜にかけて涼しい川面をゆったりと鵜飼い船に乗って下りながら、鵜匠の見事な手綱さばきを楽しむことができます。


大洲市観光協会

住所 愛媛県大洲市大洲649-1
TEL 0893-24-2664
アクセス 松山空港から自動車で1時間、JR松山駅から伊予大洲駅まで特急で34分

タオル美術館で夏旅にかかせないタオルをゲット!

タオル生産量日本一を誇る愛媛県今治市は、国内をはじめ海外にも知られているタオルの町。そんな地元の名産品をアートとして展示・紹介しているのが「タオル美術館」です。もともと愛媛県は江戸時代から綿花栽培が盛んな土地柄で、明治時代に綿ネル機によるタオルづくりが始まり、現在に至るまで脈々と技術が受け継がれ一大生産地となりました。タオル美術館では、タオルの歴史や製造工程を見学しながら学ぶこともできるようになっています。

ギャラリー内ではムーミンをテーマにした常設展や、タオル作家による企画展などが開催されています。ショップには高品質なブランド品のタオルからリーズナブルなアウトレット商品までがズラリと並び、さらにネームの刺繍を入れてくれる工房も併設されています。夏旅のおともに欠かせない自分用のタオルをはじめ、お土産に喜ばれるギフト用まで買うことができますよ。

住所 愛媛県今治市朝倉上甲2930
TEL 0898-56-1515
アクセス 松山空港から自動車で1時間

道後温泉でさっぱり汗を流して、夏旅の疲れを癒す

さて、旅先の1日を締めくくるお楽しみといえば、やっぱり温泉です。愛媛県のみならず、四国を代表する温泉地として有名なのが「道後温泉」です。日本書紀にも記された約3000年の歴史がある日本最古の温泉ともいわれている道後温泉は、夏目漱石の名作「坊っちゃん」にも登場する名湯で、愛媛県きっての人気観光スポットです。

松山市内の中心部から路面電車で20分程の場所にある温泉街には3つの共同浴場(外湯)があり、もっとも有名なのが1894年(明治27年)に建てられた木造3階建て建築の本館です(2019年から保存修理中だが入浴は可能)。2017年に新築された別館「飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」は、飛鳥時代の建築様式をデザインに取り入れた湯屋が人気を呼び、新しい観光スポットになっています。

源泉かけ流しのお湯は、やや熱めのアルカリ性単純泉で、お肌にやさしいなめらかな泉質。その効能から「美人の湯」ともいわれ、「温泉総選挙2016」女子旅部門で1位に輝いたほど女性に人気の高い温泉です。湯船にゆったりと浸かってさっぱりと汗を流し、夏旅の疲れを癒してください。

湯上がりには、ぜひ温泉街にある商店街「道後ハイカラ通り」を探索してください。約250mのアーケード街に約60軒の飲食店や物産店がズラリと並んでいますので、地元のグルメや買い物が楽しめますよ。


道後温泉

住所 愛媛県松山市道後湯之町5番6号
TEL 089-921-5141(道後温泉事務所)
アクセス 松山空港から自動車で30分、伊予鉄道松山市駅から電車で20分