本州の中央に位置する長野県は、県土の約80%が林野で占められる、森林資源に恵まれた内陸県です。
標高の高い山々が重なり合うような地形をしていることから「日本の屋根」と呼ばれています。この中には名峰といわれる山が数多く存在し、四季折々美しい表情を見せてくれます。
また都市部では、地域によってそれぞれ異なった歴史や文化を持ち、歴史的建造物や伝統が今でも脈々と受け継がれています。
長野の秋は非常に短く、夏が終わったと思ったらすぐに冬に向かって景色が目まぐるしく変化します。
そのため雪化粧をした紅葉など、他では見られない貴重な景観を目にすることができます。
この記事では、そんな長野の秋を存分に楽しめるスポット5箇所を紹介します。

空港名:信州まつもと空港(長野空港)
住所:長野県松本市大字空港東8909番地
電話番号:0263-57-8818

公式HP:http://www.matsumoto-airport.co.jp/

松本バスターミナル~信州まつもと空港までバスで約30分
塩尻北I.C~信州まつもと空港まで車で約10分

信州まつもと空港の詳細はこちら⇒信州まつもと空港発着

秋の色に染まる美観を楽しむ!「上高地」

上高地_長野
中部山岳国立公園に属する上高地は、松本市西部にある山岳景勝地です。
穂高連峰や焼岳などの標高3,000m級の山々に囲まれた、表情豊かな自然はもちろんのこと、高山植物や多種多様の野生動物も目にすることができます。
秋には、カラマツの黄葉や紅葉が山々を色彩豊かに染め、登山客や観光客の目を楽しませてくれます。
秋のみならず、上高地の風景は季節によって表情を変え、幾度足を運んでも見飽きることはありません。
無垢の自然が造り出す、そのたぐいまれな風景を求めて、年間およそ150万人の観光客が国内外から訪れる人気スポットです。

静寂と神秘に満ちた名勝地

上高地はその山岳景観の美しさから、国の「特別名勝」と「特別天然記念物」に指定されています。
これらの2つの称号を与えられることは極めてまれなことで、実際に国から両方の認定を受けているのは、上高地を含め3箇所のみです。
このことからも、上高地は日本有数の自然遺産であることがうかがえます。
上高地の環境美化活動を目的に設立された「上高地を美しくする会」は、日々この美しい景観を維持するための活動を行っています。
その活動は、清掃活動の他、歩道の整備や外来植物除去、野生動物対策など多岐に渡っています。
多くの登山者や観光客が訪れる地にも関わらず、遊歩道や施設周辺にごみが散乱することはありません。
こうした人々の地道な取り組みが、上高地の唯一無二の「美しさ」を維持することに寄与しています。

近代登山のメッカ

今や山岳リゾートとして名を馳せる上高地ですが、明治期以前までは樹木の伐採で出入りする、木こりのみが知る未開の地でした。
かつて日本の登山は、山岳信仰や狩猟など生活に根付いた行為であり、レジャーとして登山を楽しむ文化はありませんでした。
しかし、明治政府より招聘された西欧の知識人が、上高地をはじめとした「日本アルプス」を世界中に伝えたことで、日本における登山の概念が徐々に変化していきました。
中でも、イギリスの宣教師ウォルター・ウェストンは、日本各地の名峰を世界に知らしめた「日本近代登山の父」として知られています。
1940年代に入り、山岳ブームが到来し、上高地を訪れる観光客は増加の一途を辿りました。
上高地は、山岳ブームを先駆けとして今でも山岳レジャーの魅力を伝え続けています。

秋の深まる大自然の中 斎行される「穂髙神社奥宮例大祭」

上高地バスターミナルから歩いて1時間ほどのところに明神池はあります。
この池のほとりには、アルプスの総鎮守として知られる穂高神社奥宮があり、毎年10月8日に「穂髙神社奥宮例大祭」が催されます。
明神池を御船で周遊することから「明神池お船祭」とも呼ばれているこの例大祭は、山の安全を神に祈願するもので、秋の深まる大自然を背景に、古式ゆかしい神事が執り行われます。
平安装束に身を包んだ神官たちが、雅楽の調べを奏でながら御船で周遊する様子は、さながら絵巻物を眺めているようです。

■住所:〒390-1516
長野県松本市安曇上高地(上高地観光旅館組合事務所内)

■電話番号:0263-95-2405

■受付時間:5:30~19:00(上高地観光センター)

■アクセス:長野駅 →【アルピコ高速バス】 せせらぎ号(*要予約)→上高地バスターミナル

太古から息づく信仰に触れる 信濃国一宮「諏訪大社」

諏訪大社_秋宮_長野
諏訪湖沿岸に位置する諏訪大社は、およそ1500年から2000年もの長い歴史を持つ由緒正しい神社です。
日本最古の歴史書「古事記」の中にも記されるほど、往古から人々の崇敬を集めてきました。
本殿と呼ばれる建物が存在せず、木々や山を御神体として拝しているのがこの神社の特徴の一つになっています。
生命の根源・生活の源を守る神として人々に尊ばれ、その御神徳は広大無辺です。
諏訪大社の建物は、江戸時代の二大建築流派が腕を競い合って建てられたもので、社殿は国の重要文化財に、神社周辺の森は長野県の天然記念物に指定されています。

日本最古の神社の一つ

諏訪大社は、信濃の国で最も格が高いとされる「信濃國一之宮(しなののくにいちのみや)」で、日本最古の神社の一つといわれています。
上社本宮・前宮(かみしゃほんみや・まえみや)、下社春宮・秋宮(しもしゃはるみや・あきみや)で一社が構成され、諏訪湖を挟んで南北に二社四宮が向き合っています。
建物は、諏訪造りと呼ばれる建築様式が用いられ、社殿を囲むように建てられている4本の御柱が特徴的です。
社殿の一つ幣拝殿には、獅子や鶏、竹、龍などの彫刻が施されており、特に江戸時代の宮大工 立川和四郎の建築彫刻が有名です。
躍動感に満ちた建築彫刻からは、先人の芸術的センスと技術の高さをうかがい知ることができます。

全国各地にある諏訪神社の総本社

諏訪大社は、全国に約10,000社ある諏訪神社の総本社です。
御分社が日本各地にあるのは、諏訪地方に古くから根付いている諏訪信仰が大きく関係しています。
諏訪大社の御祭神は、日本神話にも登場する建御名方神 (たけみなかたのかみ)で、かつては風、水、農耕、狩猟の神として信仰を集めていました。
建御名方神 (たけみなかたのかみ)は、武神としての一面も持っていたことから、中世以降は東国第一の軍神として崇敬されました。
その御人徳の高さから、武田信玄をはじめとした多くの名将たちが諏訪の地を訪れ、全国各地に分霊を持ち帰ったとされています。
こうして、諏訪神社は全国に広まり、今もなお多くの人々の崇敬を集めています。

四社二宮に挟まれるように位置する「諏訪湖」

諏訪盆地の真ん中に位置する諏訪湖は、湖周15.9km、面積13.3k㎡の長野県内最大の湖です。
かりん並木に囲まれた諏訪湖では、湖を周遊する遊覧船やボートなどから長野の雄大な山々を眺められます。
秋にはワカサギ釣りの大会が開催され、諏訪湖を囲む八ヶ岳連峰や霧ヶ峰高原、南アルプス山系の紅葉を眺めながらの釣りが楽しめます。
諏訪湖周辺には、数多くの美術館・博物館や豊富な湯量を誇る上諏訪温泉があります。

■住所:〒392-0015
長野県諏訪市中洲宮山1

■電話番号:0266-52-1919(上社本宮)0266-27-8035(下社秋宮)

■営業時間:9:00~16:00

■アクセス:長野駅 →【篠ノ井線】・松本乗換→【中央本線】→上諏訪駅

錦秋に染まる古道をゆく 「木曽路」

木曽路は、江戸時代に整備された江戸から京都、大阪を結ぶ主要街道「中山道」の一部です。
木曽路に該当するのは、中山道中の桜沢から立場茶屋までのおよそ100kmで、旅人の憩いの場として11の宿場町が置かれました。
幾人もの旅人が行き交い賑わいを見せた木曽路には、今でも歴史的な建物や史跡が多く残されています。
この地にあるもの全てに、脈々と受け継がれてきた貴重な文化が息づいており、ノスタルジーを感じさせる街道歩きを楽しむことができます。

日本遺産の一つ

木曽路は、2016年4月に長野県で初めて日本遺産に指定されました。
日本遺産とは、歴史的建造物や伝統芸能などの文化財を、テーマや地域ごとに一つのストーリーとして文化庁が認定するものです。
木曽地域の文化遺産を紹介するストーリー「木曽路はすべて山の中~山を守り、山に生きる~」が日本遺産に認定され、豊かな山と森に育まれた歴史や伝統文化を今に伝えています。

江戸時代の姿を色濃く残す宿場町「妻籠宿」

険しい峠や深い谷、崖など起伏の激しい街道の要所に置かれたのが宿場です。
宿場には、主に旅人向けの茶屋や商店、宿(旅籠)があり、物資や情報の流通、文化の伝藩などに大きな役割を果たしました。
木曽路にある11の宿場跡の中でも、国内外から最も多くの観光客が訪れるのが妻籠宿です。
妻籠宿は、全国で初めて古い町並みを保存した町として知られ、1976年に国の「重要伝統的建造物保存地区」に、1981年に「郷土環境保全地域」に指定されました。
伝統的な造りである出梁造り(だしばりづくり)の建物が立ち並ぶ町並みは、江戸の面影を色濃く残しています。
秋には、宿場を囲む森閑とした美しい森の中や渓谷で、色彩豊かな紅葉を眺めることができます。

豊かな山林資源から生まれた伝統工芸品「木曽漆器」

江戸中期の厳格な森林保護政策により、生活の糧を奪われた木曽の人たちは、地場産品の生産に積極的に取り組みました。
その地場産品として作られたものが、主に曲物、漆器、お六櫛などの工芸品として今に伝わっています。
これらの工芸品は、森林の伐採を禁じられた代わりに藩から支給された木材を利用して作られました。
中でも「木曽漆器」は、藩の手厚い庇護を受けて発達し、木曽路を通る旅人の土産物として人気がありました。
この繊細な技術は連綿と今に受け継がれ、木曽の暮らしの中に息づいています。
一方で、伝統を後世に伝えることに留まらず、時代の変化に合わせて新たな伝統を生み出すことにも力を入れています。

■住所:長野県木曽郡南木曽町吾妻2159-2

■電話番号:0264-57-3123(妻籠観光協会 観光案内所)

■開館時間:8:30~17:00(妻籠観光協会 観光案内所)

■アクセス:長野駅 →【特急しなの号】名古屋行 → 木曽福島

湯煙漂う温泉郷をそぞろ歩く「渋温泉」

北信濃エリアに位置する渋温泉は、豊富な湯量と泉質で知られる温泉郷です。
街中から温泉が湧くこの地には、自家源泉や個性的な浴室をいくつも備えた宿が軒を連ねています。
歴史を感じさせる町並みと、自然の風景が混ざり合った景観も渋温泉の見どころの一つになっています。
石畳が敷き詰められた小路が趣深く、浴衣を纏って湯下駄で温泉街をそぞろ歩けば、まるでタイムスリップしたかのような気分に浸れます。
秋には色鮮やかに染まる紅葉を見ながらの温泉巡りが楽しめます。

1300年の歴史を誇る温泉街

渋温泉は、奈良時代に高僧行基によって開湯され、多くの武将や文人が訪れた地としても知られています。
人里離れた山奥に位置する温泉郷は、長い歴史の中で幾度となく土砂災害や火事に見舞われましたが、その都度再興し現在の町並みが造り上げられました。
増築と改築を繰り返した複雑な木造建築が多数残っているのも印象的で、どことなく懐かしさを思わせる雰囲気が漂っています。
個性豊かな建物の中でも、ひときわ目を引くのが、温泉街の中央にある旅館「金具屋」です。
金具屋は、今では希少な木造四階建てで、水車の廃材を使った階段やアワビの貝殻を使った屋根など、遊び心に富んだ造りが注目ポイントの一つです。
金具屋の建物のうち、「木造四階建 斉月楼」と「金具屋大広間」の2棟は、完成当時の形がそのまま残されていることから、国の有形文化財に指定されています。

厄除け巡浴で身も心も清める「九湯めぐり」

渋温泉名物として人気を博しているのが、「九湯めぐり(厄除巡浴外湯めぐり)」です。
これは、泉質や効能が異なる9つの外湯をめぐるもので、全ての温泉をめぐると苦(九)労を流し、厄除けや不老長寿、安産育児などのご利益があると信じられています。
「祈願手ぬぐい」と呼ばれる手ぬぐいに、各浴場に用意されている朱印を押していき、最後に温泉街を見下ろす「渋高薬師」を参詣します。
巡浴をしながら、個性の溢れる宿や町並みを眺めたり、お土産屋や飲食店に立ち寄ったり、各々の楽しみ方ができるのが九湯めぐりの醍醐味です。
外湯は全て100%源泉掛け流しで、地中から湧き出たそのままの温泉を肌で感じることができます。

自分好みの旅の思い出を詰め合わせる「九糖めぐり」

渋温泉には、素材や手作りにこだわった土産店がたくさんあります。
特に名物の渋温泉まんじゅうは、店によって色形や手ざわり、食感などが異なったまんじゅうを味わえます。
種類が多く、どれを買うか迷ってしまった方には、バラ売りの菓子を入れる「いとをかし箱」がおすすめです。
この箱は、中が9つに仕切られていて、温泉街の土産店を回りながら、好みの菓子を詰め合わせることができます。
菓子の他にも、それぞれの店オリジナルのキーホルダーなどの小物も箱に詰められます。
外湯の九湯めぐりならぬ「九糖めぐり」で、自分だけの旅の思い出を詰めてみてはいかがでしょうか。

■住所:〒381-0401
長野県下高井郡山ノ内町大字平穏

■電話番号:0269-33-2921(渋温泉組合)

■営業時間:(渋温泉厄除巡浴外湯めぐり):10:00~16:00 (宿泊者は6:00~22:00)

■料金:【入浴料】大人:500円、小人(3歳~小学生)300円、巡浴祈願手拭い:350円

■アクセス:長野駅 →【長野電鉄】特急 湯田中行 → 湯田中駅 →【バス】上林行き →「渋温泉入口」又は「渋温泉和合橋」停留所にて下車。

期間限定の秋の味覚を楽しむ「小布施堂」

長野県の北東部に位置する小布施町(おぶせまち)は、栗の産地として知られる町です。
町内には、栗菓子の老舗店や名店が軒を連ね、栗が旬を迎える秋には小布施栗を求めて、多くの観光客が訪れます。
その中でも、栗菓子の老舗である「小布施堂」は有名で、小布施栗をふんだんに使用したスイーツを堪能できます。
小布施堂はメディアでも頻繁に紹介され、時には早朝から行列ができるほど人気を集めています。

栗と葛飾北斎の町

江戸時代に交通と経済の要所として栄えた小布施町には、今もなお当時の面影を残す歴史的遺産が数多く残っています。
小布施町は、当時人々が行き交い集まる中、多数の文人墨客もこの地を訪れ、彼らの影響を受けながら独特の文化が育まれていきました。
葛飾北斎は、小布施の魅力に引き付けられた文人墨客の一人で、この地には彼の肉筆画や錦絵が今でも大切に保管されています。
また、栗の栽培の歴史も古く、一説には室町時代から始まったといわれています。
豊かな土壌と、北信濃特有の気候に恵まれた小布施で獲れる栗は評判を呼び、徳川将軍家へ献上されたほどでした。

民家の庭を自由に通り抜けできる「オープンガーデン」

小布施町では、個人宅の庭を誰でも気軽に訪問できる「オープンガーデン」という取り組みを行っています。
これは、小布施町に古くから伝わる「縁側文化」「お庭ごめん」の風習を取り入れたもので、
現在は100軒を超える民家がオープンガーデンとして開放されています。
庭主によって丹精込めて手入れされた各々の庭は、緑が生い茂る日本庭園から花々が咲き誇るガーデンまでさまざまです。
来訪者をいつでも温かく迎え入れるオープンガーデンからは、交易地として栄えた小布施町ならではの精神を体感することができます。

新栗時期にしか味わえない 栗の点心「朱雀」

栗菓子専門店「小布施堂」の「朱雀」は、小布施町でしか味わえない秋の絶品スイーツです。
毎年、新栗収穫期の1ヶ月間に限り販売され、県内外から多くの人々が押し寄せます。
素麺状に裏ごしされた新栗が、栗餡の上にふわりと盛られていて、そのボリューム感には圧倒されます。
「栗の点心」とも呼ばれる「朱雀」の原料は100%小布施栗で、中心部の栗餡以外は砂糖を一切使用していません。
ほんのりとした甘さの中に、香り高い栗の繊細な風味を楽しむことができます。

■住所:長野県上高井郡小布施町小布施808

■電話番号:026-247-2027

■営業時間:9:00〜17:00

■アクセス:長野駅 →【長野電鉄長野線】信州中野行 →小布施駅から徒歩約10分

まとめ

今回は、長野の秋を存分に楽しめるスポット5箇所を紹介しました。
変化に富んだ地形を持つ長野県は、地域ごとにそれぞれ特色が異なります。
地域の特色や季節によって、多種多様な楽しみ方ができるのは長野県の魅力の一つです。
東京から新幹線で1時間45分とアクセスが良く、日帰り旅行も楽しめます。
見どころが盛りだくさんの長野県を、ぜひ心ゆくまで味わい尽くしてください。