加賀藩が治めた美しい町並みが現在でも残る金沢や、風情ある景観が魅力の加賀温泉郷など、見どころの多い石川県は、北陸地方に位置し、冬にはたくさんの雪が降ることでも知られています。冬の石川県は、定番の観光地も雪に包まれ幻想的!今回は、冬の石川県でおすすめしたい観光スポットを7箇所厳選して、その魅力とともに紹介します。
日本三名園のひとつ!兼六園
石川県のほぼ中心部に位置する金沢市は、石川県屈指の観光都市です。2015年には北陸新幹線が金沢駅まで延伸し、関東からのアクセスが便利になりました。ここでは、金沢市の定番観光スポット・「兼六園」について紹介します。
兼六園ってどんなところ?
石川県の定番観光スポット・兼六園は、水戸の偕楽園、岡山の後楽園と並ぶ、日本三名園のひとつです。そのはじまりは、1676年。加賀藩4代藩主前田綱紀が、金沢城に面する傾斜地に、自らの別荘と庭をつくったのがはじまりです。その後、歴代加賀藩主が長い年月をかけて整備し、現在のような日本を代表する庭園になりました。
兼六園は、江戸時代の庭園を代表する「回遊式庭園」という庭園手法を用いて作庭されています。回遊式庭園とは、庭園の中に池をつくり、その周りに茶屋などを点在させ、それらに立ち寄りながら庭園を鑑賞できる様式です。兼六園には大きな池がありますが、これは海をイメージしたものだと言われています。池の中には不老不死の神様が住むと言われる島がつくられており、歴代藩主は、その島に長寿や繁栄を祈願したそうです。兼六園は、歴代加賀藩主たちの願いが詰まった場所とも言えます。
兼六園の冬の見どころとは?
兼六園の冬の風物詩と言えるのが、樹木に施された放射線状のラインが美しい「雪吊り」です。北陸地方は豪雪地帯として有名ですが、その雪はほかの地域よりも湿り気が多く重いと言われています。雪吊りは、重い雪から樹木を守るための技術で、11月から12月にかけて、全て手作業で行われます。
雪吊りの作業が終わった冬の兼六園の姿は、金沢市のポスターなどにも利用されており、目にしたことのある方は多いのではないでしょうか。日中の雪吊りがされた兼六園も美しいですが、2月中旬から下旬まで行われるライトアップ「金沢城・兼六園四季物語~冬の段~」の開催期間中は、雪吊りが暖かな光に照らされ、より幻想的になります。
ライトアップ開催期間中は、園内の茶屋なども営業を延長し、特別メニューを提供します。茶屋でほっと一息つきながら、冬にしか見られない幻想的な景色を眺めてみてはいかがでしょう。
■住所:石川県金沢市丸の内1-1
■電話番号:076-234-3800(石川県金沢城・兼六園管理事務所)
■営業時間:
3月1日~10月31日 7:00~18:00
11月1日~2月末日 8:00~17:00
園内施設 施設によって異なる
■アクセス:
小松空港より車で約40分
JR金沢駅より車で約10分
金沢市民の台所!近江町市場
冬の日本海の味覚と聞くと、ズワイガニを思い浮かべる方が多いかもしれません。石川県では、水揚げされたズワイガニのオスのことを「加能ガニ」と呼びます。そんな加能ガニがずらりと並ぶのが、金沢の台所として知られる「近江町市場」です。その見どころを紹介します。
近江町市場ってどんなところ?
JR金沢駅から歩いて15分ほど、近江町市場は金沢の台所として市民に愛される施設です。現在は、生鮮食品や生活雑貨を扱うお店が約170店舗集結しています。JR金沢駅に近いこともあり、2015年の北陸新幹線開通以来、観光客にも人気のスポットになっています。
近江町市場のはじまりは、今から400年前の加賀藩による藩政時代に遡ります。前田利家が金沢城に入城した時代、金沢は江戸、大阪、京都に次ぐ大都市でした。城下には武士たちが住む武家屋敷や、多くの商店が立ち並び、賑わいを見せていたと言われています。
今から300年ほど前、城下の各地にあった市場が一か所に集められました。それが現在の近江町市場の前身です。近江町市場は、長年にわたり金沢の「食」を支えてきた重要な場所と言えます。
近江町市場の見どころとは?
現在では、「おみちょ」の愛称で親しまれる近江町市場には、お刺身や干物など、普段の生活に欠かせない食材のほか、食べ歩きができるグルメを販売するお店も多数軒を連ねています。
食べ歩きにおすすめなのが、観光客に人気の「近江町コロッケ」。定番の昔風コロッケや野菜コロッケのほか、魚介類が多く獲れる石川県ならではの甘えびコロッケなどの変わり種も販売されています。ひとつ100円程度とリーズナブルで食べやすいことから、観光客のみならず、地元の人々にも人気なのだそう。小腹が空いた時にぜひ味わってみてください。
金沢に行ったら海鮮丼を食べたい!という方は多いですよね。「いきいき亭」は、近江町で海鮮丼を味わうならここ!というほどの人気店で、店内には10席しか座る場所がありませんが、そのぶん活気が感じられるお店です。お店一番人気のいきいき亭丼は、なんと14種類のネタが入った宝箱のような一杯。ネタがなくなり次第営業終了なので、早めに行くことをおすすめします。朝は朝食にぴったりなミニ海鮮丼も味わえますよ。
■住所:石川県金沢市上近江町50
■電話番号:076-231-1462
■営業時間:お店によって異なる
■アクセス:
小松空港より車で約40分
JR金沢駅より徒歩約15分
冬だけの風情を味わって!長町武家屋敷跡
香林坊東急スクエアや、商業施設のアトリオなど、ショッピングスポットが集結する金沢市の繁華街・香林坊には、多くの若者が集まり賑わいを見せていますが、その香林坊に隣接している長町には、風情ある「長町武家屋敷跡」があります。加賀藩の繁栄を今に残す武家屋敷跡には、どんな見どころがあるでしょうか。
長町武家屋敷跡ってどんなところ?
若者の街・香林坊に隣接する長町は、加賀藩の藩政時代、上流・中級階級の武士たちの屋敷が建てられた場所で、当時の石畳の路地や土塀が現在も残っており、加賀藩の繁栄を感じられることから、伝統環境保存区域に指定されています。「長町」という地名も、加賀藩の重臣・長氏の屋敷があったことに由来しています。
今でもたくさんの武家屋敷が残っていますが、一般公開されているのは「武家屋敷跡 野村家」のみです。野村家は、前田利家が金沢城に入城した1583年から廃藩まで続いた名家です。野村家には、当時は珍しかったギヤマン入りの障子があったり、襖には狩野派最高峰とも称される佐々木泉景の山水画が描かれていたりと、野村家の栄華を今に残す細工が、至る所で見られます。2階の茶室では庭園を眺めながら抹茶がいただけるので、雪の積もった幻想的な景観を楽しみながら、ほっと一息ついてみてはいかがでしょう。
冬の長町武家屋敷跡の魅力とは?
冬の長町武家屋敷跡の土塀は、わらで編まれた「こも」というむしろで覆われています。兼六園の雪吊りと並び、冬の金沢の風物詩とも言われる「こも」ですが、ただの飾りではありません。
兼六園の雪吊りの部分で紹介したように、石川県に降る雪は水分が多いのが特徴です。ひと冬の間水分の多い雪に埋もれた土塀は、傷み損傷してしまう恐れがあります。「こも」は、雪から土塀を守るための、昔からの知恵なのです。ほかの季節では見られない光景なので、冬の長町武家屋敷跡に訪れた際はチェックしてみてください。12月から3月頃まで見ることができます。
また、現在の長町武家屋敷跡には、その風情ある景観を壊さないように、落ち着いた雰囲気のカフェやレストラン、ギャラリーが点在しています。中でも金沢市発祥の九谷焼を展示・販売する「金沢九谷ミュウジアム」は、お土産を購入するのにおすすめです。
■住所:石川県金沢市長町
■電話番号:076-232-1170
■アクセス:
小松空港より車で約45分
JR金沢駅より徒歩約20分
夜はライトアップも開催!尾山神社
先ほど紹介した長町武家屋敷跡から歩いて10分ほど。近くに金沢城公園や兼六園がある、金沢市内屈指の観光地区にあるのが「尾山神社」です。参拝客を出迎える美しい神門が人気の、尾山神社の歴史や見どころを紹介します。
尾山神社ってどんなところ?
金沢市の歴史を語る上で欠かせない、加賀藩の藩祖・前田利家は、織田信長に仕え、後に徳川家康や上杉景勝らと並ぶ、豊臣政権の五大老のひとりとなりました。利家は端正な顔立ちで、槍の名手だったという逸話も残っており、男女問わずファンの多い武将です。尾山神社は、加賀藩の基礎を築いた前田利家と、その正室・お松を祀る神社として、1873年に創建しました。
尾山神社は、利家が亡くなった1599年、息子の利長が利家の霊を祀ろうとしたのがはじまりです。しかし、当時の加賀藩は外様大名だったため、幕府の許可無しに藩主を祀る神社を建てることはできませんでした。そこで、八幡神と天照大神を祀る卯辰八幡社を建て、そこに利家を祀ることにしたのです。卯辰八幡社は、現在の尾山神社の前身とも言えます。
1873年に明治政府より神社を建てる許可を得て、新たな社殿をはじめ、境内に数々の建物が建てられました。中でも、1875年に建てられた神門は、尾山神社を代表する建物として知られています。現在の尾山神社は、兼六園や金沢城公園と並ぶ、石川県観光では外せないスポットです。
尾山神社の見どころ!神門について
1875年に建てられた神門は、珍しい三層造りになっています。一層目には戸室石が、二層目には欄干が、そして三層目にはシンボルとも言えるギヤマンが施されています。このギヤマンは今でいうステンドグラスのようなもので、かつては明かりが灯され、日本海を航行する船の目標として、灯台のような役割を果たしてきました。また、三層目の頂上には、日本最古の避雷針が施されています。
日中でも美しい神門ですが、日没から22時まではライトアップが行われています。尾山神社は前田利家と正室のお松が祀られていることから、夫婦円満や縁結びの神社としても有名です。幻想的な神門を眺めながら、夜のデートを楽しんでみてはいかがでしょう。
■住所:石川県金沢市尾山町11-1
■電話番号:076-231-7210
■アクセス:
小松空港より車で約40分
JR金沢駅より徒歩約20分
仕掛け色々!妙立寺(忍者寺)
出格子が美しいにし茶屋街は、ひがし茶屋街、主計町茶屋街と並び、金沢三茶屋街のひとつです。風情あるにし茶屋街には、今でも多くの芸妓が籍を置いています。そんなにし茶屋街から歩いて3分ほどの場所にある「妙立寺」は、別名「忍者寺」とも呼ばれる寺院です。その歴史や見どころを紹介します。
妙立寺ってどんなところ?
加賀藩の開祖・前田利家が金沢城に入城した際、彼は藩を守護する祈願所を城内に建立しました。妙立寺は、その祈願所を、加賀藩3代藩主利常が1643年に現在の場所に移築建立したものです。妙立寺のお堂には、落とし穴になる賽銭箱や、床板に隠された階段、金沢城への抜け穴が整備され、まるで迷路のようになっていることから、別名「忍者寺」と呼ばれています。
迷路のようなお堂と「忍者寺」という名前から、「ここに忍者がいたの?」と思われるかもしれませんが、実は忍者とは一切関係がありません。建立当時の加賀藩は、百万石の禄高を誇る外様大名の雄として、江戸幕府の監視下にありました。外様大名とは、関ヶ原の戦い後に、徳川家に従った大名たちのことです。そのため、加賀藩と江戸幕府は、あまり仲が良くありませんでした。その関係の悪さは、幕府の中で加賀藩を断絶しようとする計画が練られていたほどだったと言われています。妙立寺の仕掛けは、幕府から襲撃を受けた時、外敵を欺くために施されたものです。
その役割を表すように、お堂内部には、敵の動きをいち早く察知できるようにガラス張りにされた物見やぐらや、武器の手入れがしやすいように天井を高くした部屋など、砦として利用できるようになっていたことが分かる場所も現存しています。
妙立寺を見学するには?
妙立寺の見学には電話予約が必要です。見学予定日の一か月前から予約ができるので、訪れる日が決まったら忘れずに予約しましょう。お堂内部の見学は、見どころを案内してくれるガイドつきです。
先ほど紹介したように、お堂内部には外敵を欺くための細工がたくさんあり、普通に歩いていると気づかないような仕掛けもあるので、ガイドさんの解説を聞き逃さないようにしましょう。ネットでは知ることができない、秘話が聞けるかもしれません。また、お堂内部は写真撮影が禁止されているので注意してください。にし茶屋街周辺の観光と併せて、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょう。
■住所:石川県金沢市野町1-2-12
■電話番号:076-241-0888
■営業時間:
平日 9:00~16:00
土日祝 9:00~16:30
■アクセス:
小松空港より車で約35分
北陸鉄道石川線野町駅より徒歩約8分
加賀藩主ゆかりの秘湯!湯涌温泉
冬の旅行の定番と言えば、なんといっても温泉でしょう。石川県には、加賀温泉郷や和島温泉、和倉温泉など数多くの温泉地が存在します。山間部のひっそりとした温泉地に行ってみたいという方におすすめなのが、金沢市街地から車で20分ほどの場所にある「湯涌(ゆわく)温泉」です。ここでは、湯桶温泉の魅力やおすすめの宿について紹介します。
湯涌温泉ってどんなところ?
兼六園や金沢城公園などのある金沢市街地から、車で20分ほどの場所にある湯涌温泉は、「金沢にこんな場所があったの?」と驚く方が多い、秘境の温泉です。720年頃に、農夫が体を癒す白鷺を見て、温泉を発見したと言われています。
加賀藩の藩政時代には、歴代藩主の湯治場として栄えた湯涌温泉ですが、大正時代には、美人画で有名な竹久夢二の数々の絵画のモデルとなった笠井彦乃と竹久夢二が、幸せなひと時を過ごした、ロマンあふれる温泉地としても有名です。
また、近年ではアニメ「花咲くいろは」の舞台となったことで、聖地巡礼に訪れるファンも多いのだそう。作中には、神様が神無月に出雲へ行く際、道に迷わないようにと、人々が道をぼんぼりで照らすという描写があります。例年10月に開催される「湯涌ぼんぼり祭り」は、その描写を再現したイベントです。暗闇を照らすぼんぼりは幻想的で、アニメファンはもちろん、そうでない方でも楽しめます。
おすすめの宿「古香里庵」について
湯涌温泉は、9軒の旅館が佇む静かな温泉地です。中でも人気なのが、1日4組しか宿泊客を取らない旅館「古香里庵」です。小さな宿だからこそのおもてなしが光る宿です。
4つの客室はそれぞれ趣や利用できる人数が異なります。カップルや夫婦はもちろん、家族での利用など、シーンによって選択できます。また、古香里庵の自慢は、館内に大浴場がない代わりに、全客室に広めの露天風呂がついていることです。雪の降り積もる庭園を眺めながら、好きな時間にいつでも入浴できると人気です。
山間部に位置しながら海からも近いため、海の幸、山の幸が味わえるのも、湯涌温泉の魅力です。古香里庵では、冬に旬を迎える加能ガニを、生、焼き、しゃぶしゃぶと色々な食べ方で味わえます。このほか、脂ののった寒ブリも人気料理のひとつ。お酒や会話を楽しみながら、石川県の旬を思う存分堪能できます。
■住所:石川県金沢市湯涌
■電話番号:076-235-1040
■アクセス:小松空港より車で約1時間
松尾芭蕉も訪れた!山中温泉
温泉だけでなく、自然、歴史、文化と、様々な魅力を持つ「山中温泉」は、鶴仙渓やこおろぎ橋、あやとり橋などの見どころも多く、温泉街のそぞろ歩きもおすすめです。ここでは、山中温泉の歴史や見どころと、おすすめの宿「花紫」について紹介します。
山中温泉ってどんなところ?
山中温泉は、粟津温泉、片山津温泉、山代温泉と並び、「加賀温泉郷」のひとつに数えられる温泉地です。今から1300年前に、行基が発見したと言われています。江戸時代には、奥の細道で松尾芭蕉が訪れ、「山中や 菊は手折らじ 湯の匂ひ」という句を詠みました。山中温泉を気に入った芭蕉は、弟子の曾良とともに、9日間もの間山中の湯を楽しんだと言われています。
山中温泉の魅力は温泉だけではありません。温泉街の中心部には、自然豊かな景勝地「鶴仙渓」があり、冬には雪が降り積もり銀世界を見せてくれます。鶴仙渓は大聖寺川にある渓谷で、山中温泉のほとんどの旅館は渓谷に面して建っています。
また、山中温泉は、九谷焼や山中漆器など日本の伝統的な陶磁器の一大生産地としても知られています。美しい器でいただく料理は、おいしさが際立ちます。山中温泉の旅館に宿泊する際は、食事の時に使用される器もじっくりと見てみてください。
おすすめの宿「花紫」について
鶴仙渓沿いに建つ「花紫」は、全27室の和モダンな旅館です。全客室から鶴仙渓を眺めることができ、川のせせらぎがBGMになって、心安らぐひと時が過ごせます。
松尾芭蕉も愛した自慢の温泉は、展望露天風呂と大浴場の2種類あり、展望露天風呂からは、鶴仙渓を見渡すことができます。朝5時から24時まで入浴ができるので、時間の移ろいとともに表情を変える鶴仙渓を、湯浴みを楽しみながらご覧ください。
また、花紫の料理は、自分の好きな料理を選べるアラカルト懐石になっており、世界にひとつだけの、オーダーメイドの食事が味わえます。選べるメニューはなんと約50種類!選ぶのも楽しみのひとつです。使用される器はもちろん九谷焼や山中漆器で、五感で楽しめる料理になっています。九谷焼や山中漆器は、館内の売店で販売しているので、旅の思い出に購入してみてはいかがでしょう。
■住所:石川県加賀市山中温泉
■電話番号:0761-78-0330(山中温泉観光協会)
■アクセス:小松空港より車で約35分
歴史あふれる石川県で素敵なひと時を
北陸新幹線の開通によって、関東から行きやすくなった石川県。雪深い地域ですが、雪深いからこそ見られる風景がたくさんあります。歴史情緒あふれる金沢の街並み、日本の素晴らしさを再確認できる温泉街など、冬にぴったりなスポットが満載です。今年の冬は、体も心もほっこりするようなひと時を、石川県で過ごしてみませんか?